1968年、ビートルズのメンバーであるジョン・レノンとアーティストのヨーコ・オノが共同制作した「未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」は、当時の音楽界に衝撃を与えました。
この作品は、単なる実験的なサウンドコラージュにとどまらず、ふたりの芸術的・精神的な結びつき、そしてビートルズ内外での波紋を巻き起こすきっかけともなりました。
本記事では、「ジョン・レノン ヨーコ・オノ 未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」というキーワードから、この作品が誕生した背景、内容、そして社会的インパクトまでを徹底的に掘り下げて解説します。
この記事を読むとわかること
- ジョン・レノンとヨーコ・オノの共同作品「トゥー・ヴァージンズ」の全貌
- 物議を醸したジャケット写真とその芸術的意図
- 実験音楽としての位置づけと現代における再評価

「未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」はどんな内容?
ジョン・レノンとヨーコ・オノが1968年に発表した「未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」は、従来の音楽作品とは一線を画す実験的なサウンドアートです。
その内容はメロディやリズムを重視したポップソングとは異なり、テープループや電子音、日常のノイズなどを用いた即興的な音響コラージュによって構成されています。
この作品は、音楽というよりも「音による芸術表現」という方がふさわしく、リスナーに明確なメッセージというよりは、聴覚的な衝撃と思考の自由を促す意図が感じられます。
実験音楽としての位置づけと手法
「トゥー・ヴァージンズ」は、ジョンとヨーコが一晩中スタジオにこもり、2台のテープレコーダーを使ってリアルタイムでミックスしながら制作された作品です。
その手法は、当時のアヴァンギャルドな現代音楽やミュージック・コンクレート(具体音楽)に強く影響されており、「音楽とは何か?」という問いに対する挑戦的なアプローチとも言えます。
特に、ラジオの雑音や会話、電子音、環境音などが無秩序に現れては消える構成は、従来の構造美に反旗を翻すような衝動的表現です。
録音された背景と制作環境
このアルバムが録音されたのは、1968年5月19日、ジョンの妻シンシアが旅行中に留守のケンウッド邸宅にてでした。
ふたりは夜通し語り合い、精神的にも肉体的にも結ばれたその流れのまま、即興的に制作に突入したとされています。
その空気感は作品全体にも色濃く反映されており、音楽というよりふたりの「出会いの記録」とも言える特異なドキュメント作品となっています。
収録曲とその解説
「未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」は、伝統的なアルバムのような「曲」構成ではなく、A面・B面に分かれた2つの長尺のサウンドコラージュで構成されています。
それぞれには明確なタイトルやトラック分けがなく、約30分にわたるノンストップの音響実験として再生されます。
そのため、楽曲単位の解説というよりは、A面・B面それぞれに込められたテーマや聴きどころを紹介します。
A面:「Unfinished Music No.1: Two Virgins – Side A」
A面はおおよそ14分間にわたる音響の旅で、開始から雑音、打撃音、逆再生された声、そしてヨーコの高い叫び声などがランダムに登場します。
ジョンとヨーコが実際に会話しているような囁き声や息づかいも随所に聞こえ、まるで“聴覚的な夢日記”のような印象を与えます。
特定の楽器演奏や旋律は存在せず、純粋にふたりの感覚で構成されたサウンドの羅列が続きます。
B面:「Unfinished Music No.1: Two Virgins – Side B」
続くB面では、A面に比べてやや静的な構成が特徴的です。
環境音や鐘のような電子音、フィルターをかけた声の断片などが、より瞑想的に配置されています。
終盤に近づくにつれ音が徐々にフェードアウトし、まるで何かが生まれては消えていく「無音の胎動」のような感覚すら覚えます。
総じて、このアルバムは“聴く”より“感じる”音楽であり、ジョンとヨーコが初めて芸術的に結びついた瞬間の記録として捉えるべき作品です。
ジャケット写真が物議を醸した理由
「未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」が当時の社会に与えた最大の衝撃は、ジョン・レノンとヨーコ・オノの全裸を写したジャケット写真にありました。
アートの文脈では「ヌード」は決して珍しい表現ではありませんが、世界的スーパースターのジョンが自らの裸体をさらけ出すという行為は、1960年代のポピュラーカルチャーの常識を打ち破るものでした。
特にビートルズのファンにとっては、「偶像崇拝の崩壊」とも言える衝撃的なビジュアルだったのです。
ふたりのヌード写真が意味するもの
このジャケットに込められた意図は、単なる話題作りではありません。
ジョンとヨーコは、“人間が本来持つ純粋な姿と精神的なつながり”を象徴としてヌードを選びました。
ふたりは写真スタジオではなく、ジョンの自宅のプライベートな空間で互いにシャッターを押し合ったとされ、その親密さと誠実さが写真にも滲み出ています。
また、裏ジャケットには背面からの全裸写真が使われ、“表も裏も偽りのない存在”というメッセージが込められていたと解釈されています。
発売当時のメディアとファンの反応
このジャケットは即座に大きな論争を巻き起こしました。
イギリスやアメリカでは販売を拒否されるレコード店が続出し、輸送時には袋に封入される措置が取られました。
メディアもこぞって「猥褻」「挑発的」と非難する一方で、アート業界からは「新しい表現の試み」として擁護の声もありました。
ファンの反応も賛否が分かれ、ヨーコ・オノへのバッシングが強まるきっかけにもなったのです。
このジャケットは、音楽における“表現の自由”の境界線を問う問題作であり、今なおアートとして再評価されています。
「トゥー・ヴァージンズ」が与えたジョンとヨーコへの影響
「未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」は、作品そのもの以上に、ジョン・レノンとヨーコ・オノの人生に大きな影響を与えました。
このアルバムの発表を通して、ふたりの芸術的な結びつきが世間に強く印象づけられた一方で、さまざまな批判や混乱も巻き起こりました。
それは、音楽界における常識や商業的成功を超越した、芸術家としての覚悟と孤立の始まりでもあったのです。
ビートルズ内部の軋轢とソロ活動への布石
「トゥー・ヴァージンズ」の発表は、ビートルズの他メンバーにとって大きな違和感を与える出来事でした。
バンド活動とは無関係に、ジョンがヨーコとの作品を“個人名義”でリリースしたことに、ポール・マッカートニーらは少なからず懸念を抱いたとされています。
この作品は結果的に、ジョンの創作欲求がビートルズという枠を超えていく過程を象徴するものとなり、ソロ活動への第一歩と見なされることもあります。
ヨーコ・オノのアーティストとしての認知拡大
当時の大衆はヨーコ・オノを「ジョンを変えた女」「ビートルズを壊した存在」と批判しましたが、芸術界ではむしろ彼女の活動が注目され始めました。
「トゥー・ヴァージンズ」のコンセプトや表現は、ヨーコが60年代から取り組んできた前衛芸術と完全に一致しており、彼女のビジョンが明確に反映されたものだったのです。
“音楽ではなくアート”という観点から本作を評価する動きが広まり、現代アーティストとしての地位が確立されていきました。
「トゥー・ヴァージンズ」はふたりにとって、世間との衝突を覚悟したうえでの「創作の原点」だったと言えるでしょう。
現代から見た『未完成作品第1番』の評価と価値
当時はスキャンダラスな視線を集めた「未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」ですが、現代では再評価が進み、その芸術的・文化的意義が見直されています。
これは単なる“変わり者の記録”ではなく、音楽の可能性を広げた革新的作品として、アート、音楽、哲学の領域で語られることが増えています。
評価のポイントは、表現の自由、愛と裸のメタファー、そして前衛芸術との融合という3つの軸に集約されます。
音楽史における実験作品の役割
この作品は、「音楽とは何か?」という根源的な問いをリスナーに突きつけました。
構造、旋律、美しさといった従来の評価基準をあえて外すことで、リスナーの感性や解釈をより自由に開放する作品として位置づけられます。
これにより、後のノイズミュージックやアンビエントの先駆けとして、現代の実験音楽家にも大きな影響を与えています。
文化的・芸術的文脈での再評価
今日では、美術館や現代音楽の文脈で「トゥー・ヴァージンズ」が取り上げられる機会も増えており、サウンドアートやマルチメディア作品の原点として紹介されることもあります。
また、アートブックや論文では、ふたりの裸が持つ象徴性(無防備さ、純粋さ、統合)がフェミニズムやボディ・ポジティブの文脈で読み直されています。
“芸術は時代を超えて意味を変える”ということを証明する好例と言えるでしょう。
今の時代だからこそ、「未完成作品第1番」は、愛・自由・表現をめぐる深い問いを私たちに投げかけてくるのです。
ジョン・レノン ヨーコ・オノ 未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズのまとめ
「未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ」は、音楽という枠を超えた“表現行為そのもの”として生まれた異色の作品です。
ジョン・レノンとヨーコ・オノが初めて深く芸術的に結びつき、自らの存在と感性を丸ごとさらけ出したこの作品は、ポップミュージック史の中でも最も異端で、最も純粋な記録のひとつと言えるでしょう。
当時の社会からは理解されず、議論と誤解を呼びましたが、現代においては「自由な表現」と「愛のかたち」を体現した先駆的な作品として再評価されています。
本作を聴くことは、ただの音楽鑑賞にとどまらず、ふたりの心の記録、愛と芸術への覚悟に触れる体験でもあります。
もしあなたが「音楽=心地よさ」「芸術=形のあるもの」という先入観を持っているのなら、この作品はその考え方に揺さぶりをかける一撃となるかもしれません。
「トゥー・ヴァージンズ」は、音楽の歴史の中で光よりもむしろ“影”として記憶されてきた作品ですが、その影は、確かに後世に深いインスピレーションを与え続けています。
この記事のまとめ
- ジョンとヨーコ初の共同作品
- 全編ノンストップの実験音楽
- ヌードジャケットの衝撃
- 即興的な録音と制作背景
- ビートルズ解散への布石
- ヨーコ・オノの芸術的主張
- 当時の大衆とメディアの反応
- 現代アートとしての再評価
- 愛と自由を表現した象徴的作品

