プリンス『Rave Un2 the Joy Fantastic』――記憶の中で鳴り続ける「喜び」の祝祭

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1999年11月9日(日本では11月11日)、プリンスが再びメジャー・レーベルに戻り、約3年の沈黙を破ったその瞬間が、このアルバムの誕生でした。
タイトル曲『Rave Un2 the Joy Fantastic』は、本来1988年に構想された“幻の祝祭”の再構築。80年代のレトロな響きと、90年代末に向けた未来への渇望が交錯し、その音には“過去の私と対話する”深い祈りが宿っています。

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📝 この記事を読むとわかること

  • プリンス『Rave Un2 the Joy Fantastic』が“幻”の構想から甦った背景
  • 各収録曲に込められたテーマや詩的なメッセージ、音のニュアンス
  • チャックD、グウェン・ステファニー、アニ・ディフランコなど、多彩なゲストとのコラボレーションの魅力
  • アルバム全体の音楽的構成と、静と動が織り成す感情のグラデーション
  • ジャケットや歌詞カードに込められた“視覚の物語”とメッセージ性
  • リミックス盤『Rave In2』と再発盤『Ultimate Rave』による再評価の軌跡
  • 霧島 澪自身の音楽的記憶と、アルバムが呼び起こす“聴く人生”の瞬間

誕生の背景:忘れられた構想が時を越えて甦る

“Rave Unto the Joy Fantastic”という言葉がプリンスの中で震えていたのは1988年。しかし、それを世に出すにはまだ早すぎた。
そんな“幻”を、11年後にアルバムの幕開けとして用いることで、彼はふたたび亡霊のような過去と向き合い、未来を見据える決意を音で描くのです。

コラボという共鳴:色とりどりの魂たちとの化学反応

  • “Undisputed”:チャックD(パブリック・エネミー)が呼吸するヒップホップの魂。プリンスのポップと衝突し合う瞬間、音楽は燃え盛る。
  • “Hot Wit’ U”:Eveと踊るようなリズム。跳ねるリリックに乗せて揺れるプリンスの色気。
  • “So Far, So Pleased”:グウェン・ステファニーと綴る甘酸っぱいデュエット。まるで恋のメロディがふたりを包み込むよう。
  • “Baby Knows”:シェリル・クロウとの交信。日常と非日常、ポップとロックが静かに響き合う。

さらに、“I Love U, but I Don’t Trust U Anymore”ではアニ・ディフランコとプリンスが、信頼と葛藤の狭間を静かに歌い合います。それはまるで、深い秘密を打ち明けるような静謐な瞬間でした。

楽曲構成:エネルギーと静けさを行き交う感情の航海

16曲+隠しトラックという豊かな構成。それぞれが、アルバムという一つの時間の中で微妙に揺れ動く。聞くたびに違う顔を見せる、それがこの作品の底力です。

  • “The Greatest Romance Ever Sold”:泥の中で咲く一輪の花のような、ミディアム・バラード。切なさと誘いを同居させながら、プリンスが再び世界へ投げかけた主張。
  • “Tangerine”“The Sun, the Moon and Stars”:静かに夜明けを描く曲たち。呼吸する視線を感じながら、思考の深みに沈んでいく。
  • “Silly Game”“Strange but True”:ミニマルなファンクが、余白に揺れるビートを刻む。その静謐こそがプリンスのアート。
  • “Wherever U Go, Whatever U Do”:アコースティックな哀愁に満ちたロック・バラード。
  • “Sprettyman”:隠しトラックの名に相応しく、最後にひっそりとその存在を告げるグルーヴの余韻。

評価と商業的軌跡:賛否を超えた静かな革命

リリース時、批評家たちの声は割れました。AllMusicは前作『Newpower Soul』との類似を指摘しつつも、“ゲストの化学反応”を称賛。一方で、Robert Christgau(Village Voice)は「ビジネス・フォーマット的」とその狙いに眉を潜めました。
しかし音楽とは、その時点での評価を超えて鳴り続けるもの。カナダで5位、米国では最高18位、そしてRIAAでゴールド認定を獲得したこのアルバムは、今もゆらりと心に響きを残しています。

リミックスと再評価:『Rave In2…』からUltimate Raveへの旅

2001年、会員限定で郵送配布された『Rave In2 the Joy Fantastic』。その静かなリミックスの渦の中に、プリンスの遊び心も悲しみも鳴っていました。
そして2019年、『Ultimate Rave』の名で再構築されたリマスターBOXがリリースされると、かつて見過ごされた輝きが一気によみがえったのです。「真のポップの天才が、自身の自由と喜びを探す瞬間」──そう評価されたとき、このアルバムの意味は音だけでなく、魂ごと深く震えました。

個人的な印象:記憶の奥底を照らす音の灯火

初めてこのアルバムを聴いた夜、私は文化祭の舞台裏で鳴っていたギターのフレーズを思い出していました。薄暗い部室に差し込む夕陽のように、不確かな未来への灯火を放つ音。
その中に、希望と疑念、歓びと孤独が宿っている。プリンスが未来への問いかけとして贈った“祝祭”は、今でも私の心の奥で、静かに燃え続けています。

🎶 プリンス『Rave Un2 the Joy Fantastic』──全曲紹介と歌詞カード、ジャケット描写まで

イントロダクション:記憶と希望のフェスティバル

1999年11月9日(日本では11月11日)に発表されたこのアルバムは、1988年に構想されながら“幻”となったタイトル曲を核に据えた、プリンスの祝祭とも言える一枚。80年代の記憶と90年代末の未来への渇望が交錯し、音の一粒一粒が魂の鼓動を呼び覚ますようでした。

ジャケットと歌詞カードの印象

カバー写真は光と影の間に佇むプリンスの姿。青いボディスーツに身を包み、軽く斜に構えた眼差しには静かな決意が宿ります。背景は純白、左にはタイトルとシンボルが薄い青で配され、一見ミニマルながら強烈なヴィジュアルインパクトを放ちます。
歌詞カードは折りたたむとポスターサイズ(約356×237mm)になる設計で、裏面に全曲の歌詞とプリンスからの感謝のメッセージ(Mayte GarciaやManuela Testoliniに向けた言葉、羊毛服への抗議を含む)が丁寧に記されています。まるでアルバム全体がひとつのアートワークであるかのようでした。

全16トラック+隠し曲 “Segue III” と “Prettyman”

歌詞の内容、サウンドの特徴、それに込められたプリンスの想いを、曲ごとに霧島澪的に丁寧に紡いでみます。

  • 1. Rave Un2 the Joy Fantastic
    1988年に録音された幻のオープニング曲を再構築。Linn LM‑1やオリエンタルなギターのリフが静かに火を灯し、「life celebration」という歌詞に象徴されるように、祝祭への招待状が音になって響きます。
  • 2. Undisputed
    Chuck Dとのスピリチュアルな出会い。スピーチ風ラップと断片的なファンクギターが交差し、「NPG, get rowdy now」で響く解放感。「私は無敵だ」という意思表明が鳴り渡ります。
  • 3. The Greatest Romance Ever Sold
    ミディアムテンポのバラード。多層のコーラスが囁くように重なり、恋と自己の葛藤を同時に表現。「最も売られたロマンス」であることの皮肉と悲しみが胸に迫ります。
  • 4. Hot Wit’ U
    Eveと共に踊るような軽快なヒップホップ風トラック。夜のネオンのように跳ねるリズムとプリンスの官能的なヴォーカルが、聴く者の身体を揺らします。
  • 5. Tangerine
    フェレットのように繊細なギターと柔らかなフェルセット。過去への未練が「タンジェリン色のネグリジェ」に象徴されるように、揺れ動く感情を描き出します。
  • 6. So Far, So Pleased
    Gwen Stefaniとの甘酸っぱいデュエット。愛の“今いる満足”が漂うロックとポップの狭間で、柔らかな静けさが広がる瞬間です。
  • 7. The Sun, the Moon and Stars
    レゲエ風のリズムとストリングスが織りなす静かな宇宙。語られるのは、恋により宇宙さえも近づくような陶酔の感覚。
  • 8. Man ‘O’ War
    力強いファンクナンバー。ドラムとホーンが咆哮し、戦争のような喧騒の中で揺れる愛や権力のメタファーが音を通して浮かび上がります。
  • 9. Baby Knows
    Sheryl Crowとの共演。ブルースロック寄りのリズムと“Mondharmonika”の音色で、プリンスが惚れた“その女”への賛美が響きます。歌詞では彼女の自信と強さが生き生きと描かれています。
  • 10. Eye Love U, but Eye Don’t Trust U Anymore
    Ani DiFrancoのアコースティックギターが静謐を導くクラシックなバラード。過去の裏切りに対する痛みと、まだ残る愛への葛藤がピアノの旋律に滲みます。
  • 11. Everyday Is a Winding Road
    シェリル・クロウのカバー曲。プリンスが選んだという点に、名曲へのリスペクトと自身の感性の旅路が交わります。
  • 12. Silly Game
    ミニマルなファンクトラック。静と動が揺れる余白の美学で、聴く者の集中を音の間に誘います。
  • 13. Strange but True
    Spoken‑word的ラップとファンクが混じり合う。音楽業界への皮肉と自己解放の主張が交錯します。
  • 14. Wherever U Go, Whatever U Do
    アコースティックロックの哀愁漂うバラード。どんな場所でも、どんな時でも、相手への想いは消えないという静かな宣言です。
  • Segue III
    約4秒の沈黙で、Miles Davisにクレジットされる“沈黙のセグエ”。無音を挟むことで心をリセットし、次の音に備える瞬間。
  • Prettyman(隠しトラック)
    Maceo Parkerのサックスが絡むアップテンポファンク。アルバムのラストに、密やかな爆発を込めるように配置された“余韻の衝撃”。

まとめ

  • 全16曲+隠し2曲。ジャンルの境界を超えた構造的多様性と感情の奔流。
  • ジャケットと歌詞カードは、ビジュアルとメッセージが一体化したアート体験。
  • 各曲の歌詞には愛、裏切り、業界批判から生きる喜びまで、プリンスの精神が込められる。
  • アルバムとしての構成も緻密で、序盤のダイナミズム、中盤のバラード、そして最後の静寂と猛熱が、聴く者を成熟へ誘う。
  • リリース:1999年11月9日(日本では11月11日)
  • サウンド:80年代のレトロ感と90年代末の未来を融合、ゲストとの化学反応で彩られる。
  • 商業成績:米国最高18位、カナダ5位、RIAAゴールド認定。
  • 批評:賛否両論。称賛の声もあれば、批判の声も寄せられた。
  • 再評価:2001年の限定リミックス、2019年のリマスターBOXで「隠れた名作」として蘇る。
  • 私見:過去と未来、歓びと迷いが交錯する「記憶を照らす音の灯火」。

🎼 この記事のまとめ

『Rave Un2 the Joy Fantastic』は、単なる復帰作でも、懐古趣味の産物でもありませんでした。
それは、1988年に生まれ損ねた“祝祭”を、1999年という時代の境目で、プリンスがもう一度音に託した「自分との対話」の記録だったのです。

多彩なゲストとの交差、ジャンルを越えたサウンドの旅、時に軽やかに、時に重く心にのしかかる詩。
そのすべてが、“今”を生きる私たちの感情の断片に呼応して、どこかにそっと触れてくる。
アルバムの最後にそっと仕込まれた“隠しトラック”のように、この作品はあなたの記憶の中でも、ふとした瞬間に鳴り出すかもしれません。

音楽が時を超えて心に届くということ。それは、遠い誰かの声が、あなたの孤独に名前をつけてくれるような奇跡。
プリンスはその奇跡を、このアルバムの中にそっと忍ばせていました。
光と影、過去と未来、歓びと哀しみ。そのすべてを包み込みながら、彼は私たちにこう語りかけているようです。
「どんなときも、音楽はあなたの傍にいる」と。

20年以上が経った今も、『Rave Un2 the Joy Fantastic』は静かに息づいています。
それは、CDラックの片隅でも、あなたの記憶の中でも——そっと、そして確かに。

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あの曲と、あの瞬間|心に残る音楽日記
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