1976年、ポール・マッカートニー率いるウイングスが行ったアメリカツアーを収録したライヴ・アルバム『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』は、ロック史に残る名盤として今も多くのファンに愛されています。
この作品には、ウイングスの代表曲だけでなく、ビートルズ時代の楽曲も含まれており、ポール・マッカートニーの音楽キャリアを俯瞰できる貴重な記録です。
本記事では、『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』の魅力を、セットリスト、演奏の完成度、リマスター版の登場など多角的にご紹介します。
この記事を読むとわかること
- 『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』の全収録曲とその魅力
- ビートルズ楽曲を含むポール・マッカートニーのライブ演出
- リマスター音源や映像作品で再評価される理由

ウイングスU.S.A.ライヴ!!の魅力とは?
1976年に行われた北米ツアーを収録したこのアルバムは、単なるライヴ盤ではありません。
ポール・マッカートニーの音楽的円熟と、バンド・ウイングスとしての完成度を高いレベルで記録した、時代の空気を封じ込めたドキュメントなのです。
ライヴ録音であることを忘れるほどの演奏力と、選曲の妙が詰まった3枚組──それが『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』です。
3枚組で届けられたツアー全編の臨場感
このライヴ・アルバムの最大の特徴は、1976年の全米ツアーからの音源を網羅した3枚組という構成にあります。
当初は2枚組の予定でしたが、海賊盤の出回りにより、ポール自らが全公演から厳選した音源で構成されたフルボリューム仕様に変更されました。
結果として、一夜限りのライヴをそのまま体感できる臨場感あふれる作品となり、ツアーに参加できなかったファンにとっては代えがたい宝物となっています。
ポール・マッカートニーの選曲と構成力の妙
オープニングの「Venus And Mars / Rock Show / Jet」のメドレーは、ツアーの幕開けを祝うにふさわしい高揚感で始まります。
続いて披露されるのは、「Let Me Roll It」「Spirits Of Ancient Egypt」「Medicine Jar」など、ウイングス後期の代表曲の数々。
観客のテンションを巧みにコントロールするポールの構成力は圧巻で、ビートルズ時代とは異なるステージ・マジックが感じられます。
このアルバムを聴くことで、私たちは1976年のアメリカにタイムスリップし、ポールとウイングスの絶頂期に立ち会うことができるのです。
ビートルズ時代の名曲がライヴで蘇る
『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』には、ポール・マッカートニーがビートルズ時代に手がけた名曲たちも数多く含まれています。
ビートルズの解散後、ポールが自らの手で再び歌うことで蘇った楽曲群は、ノスタルジーを超えて、新たな命を吹き込まれています。
その演奏はどれもが感動的で、観客との心の距離が一気に縮まる瞬間が随所に刻まれています。
「Yesterday」「Blackbird」など珠玉のアコースティックセット
中盤のアコースティック・セットは、アルバムのハイライトの一つです。
「Blackbird」「Yesterday」「I’ve Just Seen a Face」など、ギター一本で聴かせる静かなコーナーには、ポールの声とメロディの強さが凝縮されています。
「Yesterday」はオリジナル以上の深みを帯びたライヴ・ヴァージョンで、特に観客の静まり返った反応からも、名曲の力が伺えます。
オリジナルを超える感動「The Long And Winding Road」
「The Long And Winding Road」は、ビートルズ解散の象徴としても知られる楽曲ですが、このライヴではウイングスによって丁寧に再構築されています。
オーケストラに頼らず、バンド・サウンドでアンサンブルとしての調和が美しく響くこのヴァージョンは、原曲に対する新たな解釈として高く評価されています。
ポール自身がライヴで改めてこの楽曲を歌うことに意味があり、聴く者の胸に深く沁み渡る瞬間となっています。
これらの演奏は、過去を振り返るものではなく、“今”のポールが“自分の音楽”として再び向き合った記録として価値があります。
バンドとしてのウイングスの完成度を体感
『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』は、単なるポール・マッカートニーのソロ・ショーではありません。
ウイングスというバンドの一体感と成熟したパフォーマンスが、全編を通じて明確に表現されています。
ステージ上の呼吸やタイミングまで伝わってくる完成された演奏は、当時のウイングスがいかに高い完成度に達していたかを証明しています。
リンダ・マッカートニーの貢献とステージ上の存在感
バンドの中心にはもちろんポールがいますが、妻リンダ・マッカートニーの存在もこのツアーでは欠かせない要素となっています。
シンセサイザーやコーラスでの参加にとどまらず、夫ポールを支え、バンド全体の雰囲気を和らげる役割を果たしていました。
リンダの声が入ることで、楽曲に独特の暖かさと人間味が加わっており、ライヴ全体が家庭的で親密な空間へと昇華しています。
ホーンセクションを含む大所帯編成による迫力のサウンド
このツアーでは、ジミー・マッカロク(ギター)、ジョー・イングリッシュ(ドラム)、デニー・レイン(ギター&ボーカル)といったレギュラーメンバーに加え、ホーン・セクションを擁した大所帯でのステージが特徴です。
特に「Live And Let Die」や「Letting Go」などでのホーンの炸裂は、スタジオ録音では味わえないライヴならではの迫力を感じさせます。
各メンバーのソロも光っており、単なるバックバンドではなく、真の意味で「ウイングス」という一つのバンドが完成していたことが伝わってきます。
ポールのパフォーマンスが際立つ一方で、それを支えるメンバーの力も存分に発揮されているのが、このアルバムの魅力の一つです。
『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』全収録曲とその解説
このライヴ・アルバムは3枚組で構成され、ポール・マッカートニー&ウイングスの名曲と、ビートルズ時代の名曲がバランスよく配置されています。
以下に、全28曲のセットリストとそれぞれのポイントを解説します。
| 1. Venus and Mars / Rock Show / Jet | オープニングにふさわしいロックメドレー。高揚感たっぷりに会場の空気を掌握。 |
| 2. Let Me Roll It | ブルージーなリフが印象的。ポールのギターとヴォーカルの熱量が光る1曲。 |
| 3. Spirits of Ancient Egypt | デニー・レインがリードを務める曲。神秘的なタイトルとは裏腹に、ライブでは軽快な雰囲気。 |
| 4. Medicine Jar | ジミー・マッカロクがボーカルをとるナンバー。ドラッグ問題をテーマにした異色作。 |
| 5. Maybe I’m Amazed | ポールのラヴソングの傑作。スタジオ版を超える熱演が聴きどころ。 |
| 6. Call Me Back Again | ソウルフルなボーカルで観客を魅了。ポールのシャウトが胸を打つ。 |
| 7. Lady Madonna | ビートルズ時代のヒット曲。ブラスのアレンジがライブ向きに映える。 |
| 8. The Long and Winding Road | しっとりと聴かせる名バラード。アレンジがシンプルになり、歌詞の余韻が際立つ。 |
| 9. Live and Let Die | 007映画のテーマ。爆発音とライティング演出で盛り上がるライブ定番曲。 |
| 10. Picasso’s Last Words (Drink to Me) | 複雑な構成を持つ曲で、ステージでの再現度の高さが見どころ。 |
| 11. Richard Cory | サイモン&ガーファンクルのカバー。デニー・レインの歌唱が沁みる。 |
| 12. Bluebird | しっとりとしたムードのナンバー。ホーンが美しく響く。 |
| 13. I’ve Just Seen a Face | アコースティック・セットの一曲。軽快で親しみやすい。 |
| 14. Blackbird | ポール弾き語りの名演。観客の静けさが曲の美しさを際立たせる。 |
| 15. Yesterday | 最も有名なバラードのひとつ。弦楽器なしでも深い感動を与える。 |
| 16. You Gave Me the Answer | 戦前のポップス風楽曲。ユーモアと軽快さで観客を和ませる。 |
| 17. Magneto and Titanium Man | マーベルキャラにちなんだ異色ロック。サウンドは爽快。 |
| 18. Go Now | デニー・レインがモッズ時代に歌っていた名曲。観客の大合唱を誘う。 |
| 19. My Love | リンダへのラヴソング。ポールのバラード力が光る。 |
| 20. Listen to What the Man Said | 爽やかなヒット曲。ライブでもポジティブな雰囲気を放つ。 |
| 21. Let ‘Em In | マーチ風のリズムが印象的。ステージ上の演出も楽しい。 |
| 22. Time to Hide | デニー・レインのオリジナル。クールなロックナンバー。 |
| 23. Silly Love Songs | ベースがうねるディスコ風ナンバー。ライブでも観客を踊らせる。 |
| 24. Beware My Love | エモーショナルな構成の長尺曲。後半の盛り上がりは圧巻。 |
| 25. Letting Go | ダークでファンキーなグルーヴ。ホーンとギターがスリリング。 |
| 26. Band on the Run | 代表曲中の代表曲。大合唱必至の名演。 |
| 27. Hi, Hi, Hi | ストレートなロックナンバー。ライブでの爆発力は随一。 |
| 28. Soily | エンディングに選ばれたのはレア曲。ノイジーで疾走感ある一発。 |
このように、選曲の幅広さとバンドの演奏力が、アルバムを唯一無二のライヴ盤たらしめています。
ポールのキャリア全体を俯瞰する意味でも、非常に貴重なセットリストだといえるでしょう。
2013年リマスターとライヴ映像『ロックショウ』で再評価
1976年当時の熱狂をそのままパッケージした『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』は、2013年にリマスター&再発され、再び注目を集めました。
あわせて、同ツアーの様子を映像化したライヴ映画『ロックショウ(Rockshow)』も高音質・高画質で蘇り、当時を知らない世代にもその魅力が届くようになったのです。
音だけでなく映像としても記録が残っていることが、このツアーとアルバムの価値をより高めています。
高音質で甦るアナログの名演
2013年のリマスター版では、各トラックの音像がクリアになり、ポールのボーカルや楽器の分離感が飛躍的に向上しています。
アナログ特有の温かみを残しながらも、現代の音響環境でも十分に通用する音質で、新たなリスナー層にも受け入れられるサウンドに生まれ変わっています。
初めてこのアルバムに触れる方にも、2013年版は非常におすすめです。
映像で体感する1976年の熱狂的パフォーマンス
ライヴ映画『ロックショウ』は、ウイングスのアメリカツアーの様子を収録した唯一の正式映像作品であり、ポールのステージング、リンダの表情、バンドの一体感まですべてが記録された貴重な映像です。
特に「Live And Let Die」や「Silly Love Songs」など、爆発的な演出と観客の熱狂が融合するシーンは圧巻の一言。
音と映像の両面から、1976年のポール・マッカートニーをフルに体感できる作品として、ファン必携のアイテムとなっています。
これらのリマスターと映像作品の登場により、『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』は再び脚光を浴び、ポールのライヴ・キャリアの中でも特に重要な時期として再評価が進んでいます。
ウイングス U.S.A.ライヴ!! ポール・マッカートニー ビートルズの名盤として再確認する
『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』は、ビートルズ解散後のポール・マッカートニーが到達したひとつの頂点と言える作品です。
スタジオアルバムでは決して味わえないライヴの躍動感と、観客との呼吸が融合した音源には、アーティストとしての自信と喜びが溢れています。
ウイングスというバンドの完成形を刻み込んだこのアルバムは、ポール・マッカートニーのキャリアを語る上で決して欠かすことのできない記録です。
ビートルズの楽曲が随所に散りばめられながらも、それが単なる過去の再演ではなく“今”の音として鳴っているのが、この作品の最大の魅力です。
観客との一体感、バンドとの調和、演奏の完成度、そしてポールの表現者としての進化──それらが全て詰まっています。
ロック史に残るライヴ盤として、そして1970年代の音楽文化を象徴する記録として、『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』は今もなお語り継がれる価値があります。
もしあなたがまだこの作品を聴いたことがないなら、ぜひ一度体験してみてください。
それは、ただの“過去の名盤”ではなく、今この瞬間にこそ響く音楽であることに、きっと気づくはずです。
この記事のまとめ
- 1976年の全米ツアーを収録した3枚組ライヴ盤
- ポールとウイングスの絶頂期の演奏を記録
- ビートルズ楽曲の再演で新たな感動を提供
- バンドとしてのウイングスの完成度が体感できる
- ホーン隊を加えた迫力あるステージ構成
- リンダ・マッカートニーのサポートも重要な要素
- 2013年リマスター&ライヴ映像で再評価
- ポールのキャリアを語る上で欠かせない一枚

