ローリング・ストーンズ『It’s Only Rock ’n’ Roll』|1974年の転機と名曲に込められた“好きだからこそ”の哲学

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1974年、ローリング・ストーンズはロックの概念に新たな一石を投じました。

『It’s Only Rock ’n’ Roll』は、バンドにとって大きな転換期となるアルバムであり、同名のタイトル曲は「たかがロック、でも好きだからやめられない」というロック哲学を象徴する一曲です。

この記事では、ローリング・ストーンズ『It’s Only Rock ’n’ Roll』の背景、1974年の時代性、そして名曲に込められた深いメッセージを解説します。

この記事を読むとわかること

  • 『It’s Only Rock ’n’ Roll』全収録曲の特徴と聴きどころ
  • 1974年当時の時代背景とストーンズの転機としての意義
  • “たかがロック、でも好き”に込められた哲学と人生観

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「It’s Only Rock ’n’ Roll」は何がすごい?──名曲に込められたメッセージ

1974年にリリースされた「It’s Only Rock ’n’ Roll (But I Like It)」は、ローリング・ストーンズのロック観を象徴する重要な一曲です。

タイトルそのものが、ストーンズから音楽ファン・批評家に向けたロックに対するシンプルで率直な回答でした。

派手さや技巧ではなく、ロックを愛するという“感情”にすべてを委ねた名曲です。

この曲の魅力は、何よりそのグルーブ感とラフさにあります。

ロン・ウッドの自宅スタジオで即興的に生まれたセッションがそのまま採用され、バンドの肩の力が抜けた自然体の魅力がにじみ出ています。

まるで「これが俺たちのやりたい音楽なんだ」と言わんばかりの構成に、当時のファンは衝撃を受けたことでしょう。

また、「でも好きなんだ(But I Like It)」という一節は、ロックに対する愛着と反骨精神を明快に表現しています。

ミック・ジャガーの歌詞は、批評家からの鋭い言葉や、ファンの過度な期待に対して「それでも俺はロックを続ける」という決意の表れとも言えます。

ここには、商業的な成功や評価を超えた、音楽そのものを信じる精神が込められています。

一方で、ファンの間ではこの曲のテンポ感にも注目が集まります。

特にスタジオ版は“ダルなグルーブ”が特徴で、ライブ版のアップテンポなアレンジとは大きく異なります。

この違いこそが、ストーンズが楽曲を生きたものとして捉えている証左であり、演奏ごとに異なる表情を見せる楽しさが詰まっています。

「It’s Only Rock ’n’ Roll」は決して派手な構成ではありませんが、“ロックとは何か”という問いに対する最もシンプルな答えを提示した曲です。

それゆえに、50年近く経った今でも色あせることなく愛され続けているのでしょう。

たかがロック、されどロック──そんな矛盾を一言で解きほぐしてみせた、ロック史に残る傑作です。

アルバム『It’s Only Rock ’n’ Roll』全収録曲と解説

ローリング・ストーンズの12作目のスタジオアルバム『It’s Only Rock ’n’ Roll』は、ロックの快楽と哀愁が交差する個性的な作品です。

ここでは、その全10曲を順に紹介し、各楽曲の聴きどころを解説します。

ストーンズらしさと実験性が入り混じった魅力を、あらためて味わってみてください。

  • #1「If You Can’t Rock Me」
    パワー全開のロックナンバーでアルバムの幕を開ける一曲。ドラム・ベース・ギターの一体感が気持ちよく、ミックのシャウトが炸裂する勢いのあるオープニング。
  • #2「Ain’t Too Proud to Beg」
    テンプテーションズのカバーで、シンプルながらキャッチーな構成。ソウルのエッセンスを取り入れたストーンズ流アレンジが光る。
  • #3「It’s Only Rock ’n’ Roll (But I Like It)」
    アルバムのハイライト曲。“たかがロック、でも好き”というメッセージが詰まった、ロック讃歌の名曲。
  • #4「Till the Next Goodbye」
    バンドにしては珍しい、叙情的なバラード。ミックの包容力あるボーカルと、落ち着いたサウンドが印象的。
  • #5「Time Waits for No One」
    ミック・テイラーのギターが泣くように響く名曲。時の儚さをテーマにした深いバラードで、このアルバムの中で最も詩的な一曲。
  • #6「Luxury」
    ファンクとレゲエの影響を感じさせるグルーヴィーなトラック。軽妙ながらも骨太な演奏が魅力。
  • #7「Dance Little Sister」
    シンプルなビートに乗せたロックンロール。モコモコした音の質感がユニークで、ライブ映えするナンバー。
  • #8「If You Really Want to Be My Friend」
    ゴスペル風のコーラスとスローテンポなバッキングが特徴的なラブバラード。感傷的な世界観に浸れる一曲。
  • #9「Short and Curlies」
    ミックの皮肉な歌詞が冴えるブルース調の短編ソング。アルバム中で最もユーモラスな雰囲気を持つ楽曲。
  • #10「Fingerprint File」
    アルバムのラストを飾る実験的な楽曲。盗聴をテーマにした語り、ミック・ジャガーのギターとテイラーのベースが印象的。クラヴィネットやタブラを使ったスリリングなサウンドで、異色の存在感を放つ。

このように、アルバム『It’s Only Rock ’n’ Roll』は単なるロックアルバムではなく、ジャンルの垣根を越えて挑戦した実験作でもあります。

それぞれの楽曲に込められた意図や演奏の工夫に注目しながら聴くことで、より深い魅力が見えてくるはずです。

アルバム『It’s Only Rock ’n’ Roll』はなぜ転機だったのか?

『It’s Only Rock ’n’ Roll』は、ローリング・ストーンズにとって大きな転機となったアルバムです。

1974年10月にリリースされたこの作品は、プロデューサー名義「The Glimmer Twins」=ミック・ジャガーとキース・リチャーズによる初の自主管理アルバムとして知られています。

音楽的自由度の拡大と同時に、バンド内の役割分担の変化や、メンバー間の“距離”も浮き彫りになった時期でもありました。

特筆すべきはミック・テイラーの脱退です。

彼が残したギターワークは「Time Waits for No One」に代表されるように極めて抒情的で、美しい旋律を奏でています。

しかし同時に、キースとのギターアンサンブルは「絡まない」状態にまで分業が進んでいたと指摘されています。

それぞれが独自のパートを構築し、交わることなく完成される曲作りは、バンド内の関係性の変化を如実に表していたのかもしれません。

制作体制にも変化がありました。

ミック・ジャガーはゲストミュージシャンの起用に積極的で、鍵盤奏者を曲調ごとに使い分けるという采配を見せました。

  • ビリー・プレストン:ファンキーなナンバーに登場
  • ニッキー・ホプキンス:リリカルな楽曲を担当
  • イアン・スチュワート:リズム&ブルース系で貢献

これは従来のバンド一体型スタイルから、よりプロデュース志向の音作りに移行したことを示しています。

また、アルバムの商業的評価にも変化が現れました。

チャートアクションはミック・テイラー在籍期では最も短命で、熱心なファンには評価されたが、一般大衆への浸透は限定的だったと言われています。

それでも、この作品は「ロックンロールとは何か」を再定義し、次代への方向性を模索するうえで極めて重要な通過点となったのです。

総じて、『It’s Only Rock ’n’ Roll』はローリング・ストーンズの“進化”と“別れ”が同時に刻まれたアルバムでした。

混沌と確信の狭間にあって、それでも「好きだから続ける」というメッセージが、すべての軸にあるように感じられます。

1974年の時代背景とストーンズの挑戦

1974年、世界の音楽シーンは急速な変化の波の中にありました。

グラムロックの退潮、パンクの胎動、ファンクの台頭といった新しい潮流が生まれ始め、ロックバンドにとっての表現の形も変わりつつありました

そんな中、ローリング・ストーンズは『It’s Only Rock ’n’ Roll』を発表します。

当時、彼らはすでにスーパースターでした。

しかし、その一方で「ワンパターンのロックバンド」と評されることもあり、自らの進化とイメージの再構築を迫られていた時期でもあります。

そうした状況下で生まれた本作は、“ロックに対する自己批評と肯定”という二面性を孕んでいました。

たとえば「Fingerprint File」のようなファンク色の強い楽曲は、当時としては非常に前衛的でした。

ディスコやソウルといった黒人音楽の影響を強く感じさせるこの曲は、ファンの間でも話題になりました。

従来のロックンロールから脱却しようとする意思が明確に現れたこの曲は、ストーンズが時代に歩み寄りつつ、自分たちの音楽性を保ち続けるという挑戦の表れだったのです。

さらに、ミック・テイラーという若く技巧派なギタリストの存在も、70年代初頭のストーンズに知的な音楽性をもたらしていました。

1971年から1974年にかけて彼が関わった4枚のスタジオアルバムは、後に“ストーンズの黄金期”と評されるほど、音楽的に充実しています。

本作でもその影響は色濃く、「Time Waits for No One」などで聴ける叙情的なギターは、従来の荒々しいストーンズ像とは異なる一面を提示してくれます。

総じて、『It’s Only Rock ’n’ Roll』は、時代のうねりの中で生まれたストーンズの“実験作”であり、変化に対する柔軟さと反骨精神を同時に体現した作品と言えるでしょう。

激動の1974年という背景のもとで、このアルバムはまさに「でも好きなんだ(But I Like It)」という原点回帰と未来への意志を併せ持つ重要な一作となりました。

“ロックはただの音楽じゃない”──ローリング・ストーンズが伝えたこと

「It’s Only Rock ’n’ Roll(But I Like It)」という言葉は、一見すると軽く聞こえるかもしれません。

しかし、その裏にはロックという芸術に対する強烈な肯定と覚悟が込められています。

ローリング・ストーンズはこの曲で、音楽そのものに立ち返る姿勢を明確に示しました。

当時、ストーンズは音楽評論家や大衆から「もう終わったバンド」と言われることすらありました。

しかしミック・ジャガーはその批判に対して、「それでも俺はこれが好きなんだ」と高らかに宣言したのです。

この一言には、商業的成功や流行への迎合とは異なる“信念としてのロック”が現れているように感じます。

このアルバムの歌詞やサウンドを通じて見えてくるのは、音楽を「手段」ではなく「生き方」として捉える視点です。

たとえば「Fingerprint File」では、監視社会に対する警鐘を、ファンクと語りを融合させた実験的手法で表現。

ミックのささやくようなヴォーカルには、ロックスターとしての虚構と現実を行き来するような緊張感すら漂っています。

また、「Time Waits for No One」では時間の儚さと人の限界をテーマに、ミック・テイラーの感傷的なギターとともに深いメッセージが語られます。

ストーンズはこうした楽曲を通じて、単にロックを演奏するだけでなく、ロックという枠を超えて人生観を語っていたのです。

それはある意味、ロックの本質に立ち返る作業でもありました。

ストーンズのメンバー、特にミック・ジャガーにとって、本作は「語るロック」から「生きるロック」への転換点だったのかもしれません。

どれだけ時代が変わっても、たとえ評価がついてこなくても、「でも、好きなんだ」と歌い続ける彼らの姿勢に、私たちは心を打たれるのです。

ロックはただの音楽じゃない。

それは人生そのものだ──それが、ストーンズが本作で我々に届けた最大のメッセージなのではないでしょうか。

ローリング・ストーンズ『It’s Only Rock ’n’ Roll』の魅力を振り返るまとめ

『It’s Only Rock ’n’ Roll』は、リリース当時こそ賛否の分かれる作品でしたが、今あらためて聴き返すとストーンズらしさと時代性が見事に交錯したアルバムであることがわかります。

ミック・ジャガーの強烈なメッセージ、ミック・テイラーのリリカルなギター、そしてファンクやソウルを取り入れた実験的な楽曲群が、その魅力を支えています。

「たかがロック、でも好きなんだ」──この言葉がすべてを物語っています。

本作は、単なる音楽作品としてだけでなく、ロックバンドとしての哲学と進化を刻んだ記録でもあります。

キース・リチャーズのリズムギター、ゲスト陣の多彩なプレイ、プロデュース面での新たな試みなど、そのすべてが「新しいストーンズ像」への布石でした。

ミック・テイラー最後の作品であることも、時代の節目を象徴しています。

時に過小評価されがちなこのアルバムですが、その“厚み”は聴き込むほどに味わいを増していきます

それは最新のトレンドや技巧とは異なる、人間味と時代の息吹を封じ込めたグルーブがあるからです。

そして何より、“It’s only rock ’n’ roll, but I like it”と歌い切った彼らの魂に、私たちは今もなお惹かれ続けているのです。

この記事のまとめ

  • 『It’s Only Rock ’n’ Roll』は1974年の転機的作品
  • 収録曲それぞれに個性的な魅力と変化の兆し
  • ミック・テイラー脱退前の最後のアルバム
  • ファンクやソウルなど多様なジャンルを融合
  • ミック・ジャガー主導のプロデュース色が強まる
  • “でも好きなんだ”に込められたロックへの信念
  • 時代背景とともに読み解くストーンズの進化
  • 過小評価されがちな作品の再発見の手がかり
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