ローリングストーンズの『レット・イット・ブリード』は、1969年にリリースされたロック史に残る名盤アルバムです。
このアルバムは、メンバー交代や社会背景、ストーンズの音楽的進化など、さまざまな要素が交錯した時期に制作されました。
この記事では、ローリングストーンズの『レット・イット・ブリード』というアルバムに焦点をあて、その魅力と時代背景、聴きどころまで詳しく解説していきます。
この記事を読むとわかること
- 『レット・イット・ブリード』全9曲の魅力と背景
- ブライアン・ジョーンズ脱退と制作時のエピソード
- アルバムに込められた時代性と社会的メッセージ

レット・イット・ブリードの魅力と聴くべきポイント
ローリングストーンズの『レット・イット・ブリード』は、その時代性と音楽的完成度により、今なお高く評価されています。
社会的混乱とバンド内部の変化が交錯する中で作られたこのアルバムは、音楽的実験とストーンズらしさの融合を感じさせる作品です。
全9曲にわたるバリエーション豊かな構成と、骨太な演奏は、聴く者に強烈な印象を残します。
冒頭を飾る「ギミー・シェルター」の衝撃
アルバムの幕開けを飾る「ギミー・シェルター」は、まさにこの作品の象徴とも言える1曲です。
冒頭の不穏なギターリフ、マリー・クレイトンの魂を揺さぶるようなシャウト、そして“戦争がやってくる”という歌詞は、ベトナム戦争下の時代の緊迫感を生々しく伝えています。
音楽が時代を語る手段になりうるということを感じさせてくれる強烈な楽曲です。
名曲「無情の世界」に込められたメッセージ
アルバムのラストを飾る「無情の世界(You Can’t Always Get What You Want)」は、理想と現実のギャップを静かに描いた哲学的な楽曲です。
荘厳なコーラスから始まり、アコースティックギターとホーンセクションが加わる構成は、他のロックバンドにはない深みを持っています。
メッセージ性と音楽性を兼ね備えたこの曲は、今なお多くの人々に影響を与え続けている名曲です。
リチャーズが初リードボーカルを務めた「ユー・ガット・ザ・シルヴァー」
「ユー・ガット・ザ・シルヴァー」は、キース・リチャーズが初めて全編リードボーカルを務めた記念すべき曲です。
土の香りのするアコースティックギターとハーモニカ、そしてリチャーズのしゃがれた声が、素朴ながらも味わい深い世界観を作り出しています。
ストーンズの中で、ジャガーとは異なるリチャーズの表現力を知るうえで、欠かせない1曲となっています。
『レット・イット・ブリード』全曲紹介とその解説
『レット・イット・ブリード』は1969年12月にリリースされたローリング・ストーンズの傑作アルバムで、全9曲が収録されています。
社会情勢、メンバー交代、音楽的進化などが反映されたこの作品は、聴き手にさまざまな感情とメッセージを投げかけます。
ここでは、全楽曲を順に紹介し、それぞれの魅力と背景について解説します。
① ギミー・シェルター – Gimme Shelter
アルバムの冒頭を飾るこの曲は、ストーンズの代表曲であり、ベトナム戦争や社会不安を象徴する楽曲です。
ミック・ジャガーとゲストボーカルのメリー・クレイトンによる激しい掛け合いが印象的で、「戦争、殺人、レイプ」といった言葉が繰り返され、時代の混沌を映し出しています。
イントロのギターリフは今なお名演として語り継がれ、ライブでも欠かせないナンバーとなっています。
② むなしき愛 – Love in Vain
ロバート・ジョンソンによるブルースの名曲をカバーしたこの楽曲では、ストーンズのルーツであるブルース愛が色濃く表れています。
ライ・クーダーによるマンドリンが美しく響き、ミック・ジャガーの切ないボーカルが、失恋の痛みを淡々と描写しています。
この曲は、アコースティックとスライドギターの融合により、ストーンズの音楽的深みを感じさせます。
③ カントリー・ホンク – Country Honk
「ホンキー・トンク・ウィメン」のカントリーバージョンであり、アメリカ南部の雰囲気をユーモラスに表現した楽曲です。
曲の始まりと終わりにはクラクションの音が入り、遊び心あふれるアレンジが施されています。
ミック・テイラーが新たに参加しており、バイロン・バーラインによるフィドル(バイオリン)がカントリー色を強調しています。
④ リヴ・ウィズ・ミー – Live With Me
セクシャルで挑発的な歌詞とファンキーなベースラインが印象的な楽曲です。
ボビー・キーズのサックスがスパイスとなり、都会的でクールなグルーヴを演出しています。
この曲では、ストーンズのハードロック的な要素が表面化し始めたことを感じさせます。
⑤ レット・イット・ブリード – Let It Bleed
アルバムタイトル曲であり、ドラッグや退廃を皮肉った歌詞が特徴です。
「君が欲しいなら、僕に血を流させてくれ」という挑発的な言葉が、依存や関係性の危うさを描き出します。
音楽的にはスライドギターとピアノが絶妙に絡み合い、バンドとしての完成度の高さを見せています。
⑥ ミッドナイト・ランブラー – Midnight Rambler
実際の事件をモチーフにした、サイコサスペンス的な楽曲です。
曲中でテンポが何度も変化し、まるで物語が展開していくような構成になっています。
ストーンズのライブでの醍醐味として語り継がれることの多い楽曲で、即興性の高い演奏が光ります。
⑦ ユー・ガット・ザ・シルヴァー – You Got the Silver
キース・リチャーズが初めて全編ボーカルを務めた曲で、素朴さとリアルな感情が魅力です。
リチャーズの独特のしゃがれ声が、曲の持つ温かみと郷愁を強調しています。
ブライアン・ジョーンズもこの曲に参加しており、彼の最後のレコーディングのひとつでもあります。
⑧ モンキー・マン – Monkey Man
タイトルはドラッグ・ジャンキーを暗示しており、混乱と孤独をテーマにした楽曲です。
ピアノのイントロから徐々に盛り上がる構成が秀逸で、ミック・ジャガーの歌声にも陰りと力強さが共存しています。
バンドのアレンジ力の高さがよくわかる、隠れた名曲です。
⑨ 無情の世界 – You Can’t Always Get What You Want
壮大なラストを飾るこの曲は、理想と現実の狭間を歌った哲学的作品です。
ロンドン・バッハ合唱団によるクラシックなコーラスと、ホーン、アコースティックギター、ピアノなど多彩な楽器が用いられています。
この曲が提示する「欲しいものが得られるとは限らない」というテーマは、現代にも通じる普遍的なメッセージです。
制作背景とブライアン・ジョーンズの影響
『レット・イット・ブリード』は、ローリング・ストーンズにとって大きな転機となったアルバムです。
制作期間中に創設メンバーであるブライアン・ジョーンズが脱退し、ミック・テイラーが加入するという出来事がありました。
その激動の背景こそが、アルバムに独特の緊張感と深みをもたらしている要因のひとつです。
ジョーンズの脱退とミック・テイラーの加入
1969年、ドラッグ問題や精神的不安定さを抱えていたブライアン・ジョーンズは、次第にバンドの活動から離れていきました。
録音にはほとんど参加できず、バンド内の軋轢もあって、最終的に6月に脱退を表明します。
その後任として選ばれたのが、当時20歳のギタリスト、ミック・テイラーでした。
最期の録音参加となった2曲とは?
ジョーンズはアルバム収録曲のうち2曲にのみ参加しており、「ミッドナイト・ランブラー」でのパーカッションと、「ユー・ガット・ザ・シルヴァー」でのオートハープがそれに該当します。
しかし、その演奏は控えめで、楽曲の核を担うような貢献ではありませんでした。
このことからも、当時の彼の精神的・肉体的な限界が伺えます。
ジョーンズの脱退発表からわずか1ヶ月後、彼は自宅のプールで謎の死を遂げます。
『レット・イット・ブリード』は、彼の音楽人生の終着点であると同時に、ストーンズが次なる時代へと踏み出す始まりでもあったのです。
アルバム制作に関わった名ミュージシャンたち
『レット・イット・ブリード』は、ローリング・ストーンズのメンバーだけでなく、一流のゲストミュージシャンたちの参加によって、より豊かな音楽世界を築いています。
彼らの貢献は、各曲のアレンジや演奏のクオリティに大きく影響を与えています。
ここでは、アルバムの完成度を高めた名ミュージシャンたちに注目してみましょう。
ゲストとして参加したライ・クーダーとニッキー・ホプキンス
アメリカの名ギタリストライ・クーダーは、ブルースカバー「むなしき愛(Love in Vain)」にてマンドリンを演奏しています。
この温かみのある演奏は、楽曲に繊細な空気感を加える重要な役割を果たしました。
また、鍵盤奏者ニッキー・ホプキンスは、「ギミー・シェルター」「モンキー・マン」など複数の曲に参加し、彼のピアノは楽曲にエモーショナルな深みを与えています。
ボビー・キーズやメリー・クレイトンなどの支え
サックス奏者のボビー・キーズは、「リヴ・ウィズ・ミー」で印象的な演奏を披露し、後のストーンズサウンドに欠かせない存在となりました。
さらに、「ギミー・シェルター」に参加したソウルシンガーメリー・クレイトンのシャウトは、曲の緊張感を極限まで引き上げる名パフォーマンスとして語り継がれています。
彼女のボーカルは、ストーンズの音楽に女性的な強さと切実さを加える重要な要素でした。
そのほかにも、レオン・ラッセル(ピアノ/ホーンアレンジ)、アル・クーパー(オルガン/フレンチホルン)、ロンドン・バッハ合唱団など、多数のアーティストが関わっています。
ジャンルの垣根を越えたコラボレーションが、本作の多様性と完成度を支えたことは間違いありません。
『レット・イット・ブリード』の社会的背景と反響
『レット・イット・ブリード』が生まれた1969年は、社会的にも非常に混沌とした時代でした。
ベトナム戦争、ヒッピー運動の終焉、ドラッグ問題、公民権運動など、あらゆる要素が音楽にも影響を与えました。
そんな時代の空気を色濃く反映したこのアルバムは、多くのリスナーの心に強く訴えかける作品となりました。
ベトナム戦争の影響が色濃く表れた歌詞
冒頭の「ギミー・シェルター」では、「戦争がやってくる」というストレートな警告が繰り返されます。
ミック・ジャガーはインタビューで「当時は本当に暴力的な時代だった。テレビでは戦争の映像が毎日のように流れていた」と語っています。
社会の不安や怒り、絶望を表現するロックという点で、本作は象徴的な存在となりました。
発売後のチャート成績と批評家からの評価
アルバムはイギリスで全英1位、アメリカでは全米3位を記録する商業的成功を収めました。
また、各種音楽誌で高評価を受け、Rolling Stone誌の「史上最高のアルバム500」では第41位(2020年版)に選出。
ニュー・ミュージカル・エクスプレスは「なんてすごいアルバムだ」と絶賛し、「何度でも聴き返したくなる」と評しました。
さらに、このアルバムのリリース直後に開催された無料コンサート「オルタモント」での事件(観客の刺殺)は、ヒッピー文化の終焉を象徴する出来事とされ、本作に陰影を与えるエピソードとなりました。
『レット・イット・ブリード』は、ただのロックアルバムではなく、時代の記録としても語り継がれる存在です。
レット・イット・ブリードを再評価する理由とは?
『レット・イット・ブリード』は、リリースから半世紀以上が経過した今も、世界中の音楽ファンから再評価され続けている作品です。
その理由には、音楽的完成度の高さだけでなく、時代の空気を封じ込めた歴史的価値があります。
ここでは、現代の視点から見た本作の価値と注目すべきポイントを紹介します。
50周年記念エディションのリリース
2019年にはリリースからちょうど50年を迎え、「50周年記念エディション」としてリマスター盤が発売されました。
このエディションには、ステレオとモノラルのSACD、LP盤、シングル「ホンキー・トンク・ウィメン」の復刻版、80ページの豪華ブックレットなどが含まれており、ストーンズファン垂涎の内容です。
音質も大幅に向上しており、当時の録音を現代のリスナーがよりリアルに体感できるようになりました。
今なお色褪せない音楽的革新性
ブルース、カントリー、ロック、ゴスペルといった多様な音楽要素を融合させた本作は、ジャンルの枠を超えた創造性を体現しています。
また、ミック・ジャガーとキース・リチャーズの楽曲構成力や、リズム隊の精度の高さ、ゲストミュージシャンの巧みなアレンジが、何度聴いても新たな発見をもたらしてくれます。
ストーンズの“バンドとしての黄金期”を象徴する1枚として、今の世代にも響く普遍性を持っています。
ローリングストーンズ レット・イット・ブリード アルバムのまとめ
『レット・イット・ブリード』は、ローリング・ストーンズのキャリアの中でも最も重要かつ評価の高い作品の一つです。
音楽的成熟、社会的メッセージ、バンドの変革期という3つの要素が見事に融合し、ロック史に残る傑作として今なお語り継がれています。
このアルバムは、単なるヒット作ではなく、時代そのものを切り取った記録としての価値も持っています。
時代を超えて語り継がれる理由
『レット・イット・ブリード』がここまで長く愛される理由は、その圧倒的な完成度とメッセージ性にあります。
収録された全9曲が、それぞれ異なる色と物語を持ち、聴くたびに新しい感情を呼び起こします。
そして、ブライアン・ジョーンズの最後の作品でもあるこのアルバムは、ストーンズにとっての“別れ”と“始まり”の象徴でもありました。
今からでも聴くべきロックの原点
「ロックは時代を映す鏡だ」と言われますが、『レット・イット・ブリード』ほどその言葉が似合う作品は他にありません。
混乱の1969年に生まれたこのアルバムは、現代のリスナーにも響く普遍的なメッセージを持っています。
もしまだ聴いたことがないなら、今こそこのアルバムを手に取り、“音楽が語る時代”を感じてほしいと思います。
この記事のまとめ
- 1969年にリリースされた名盤アルバム
- ブライアン・ジョーンズ脱退後の混乱期に制作
- 全9曲の音楽的多様性と社会背景の融合
- 「ギミー・シェルター」や「無情の世界」は必聴
- 戦争・暴力・依存などリアルなテーマを描写
- 豪華ゲスト陣の参加で音楽の厚みが増す
- チャートでも成功し、批評家からも高評価
- 50周年記念盤で再注目された傑作
- 今なお聴く価値あるロックの原点

