ローリング・ストーンズが1970年に発表したライブ・アルバム『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、ロック史に残る名盤として語り継がれています。
本記事では、ストーンズが絶頂期に記録したこの伝説のライブ盤を徹底解説し、楽曲の魅力から当時のライブ状況、録音背景までを深掘りしていきます。
「伝説」と呼ばれる理由や、他のライブ盤との違い、聴きどころなど、ストーンズファンはもちろん、ロックファンなら必見の内容です。
- 『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』の全収録曲と演奏の魅力
- 当時のライブ状況やレコーディングの裏側
- 他のストーンズのライブ盤との違いや歴史的価値

『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』が伝説のライブ盤と称される理由
ローリング・ストーンズが1970年にリリースしたライブ・アルバム『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、ただのライブ記録を超えたロック史に残る伝説的な作品です。
このアルバムがいまだに語り継がれる理由は、音楽性の高さだけでなく、時代背景やバンドの状況など、複数の要因が重なり合った結果といえるでしょう。
それらの理由を具体的に紐解くことで、この作品の真価がより鮮明になります。
ミック・テイラー加入直後の圧巻パフォーマンス
当時のストーンズは、ギタリストのブライアン・ジョーンズが脱退・死去し、新たにミック・テイラーが加入したばかりという転換期にありました。
それにもかかわらず、テイラーは圧倒的な演奏でオーディエンスを魅了し、特に「Stray Cat Blues」や「Love in Vain」におけるブルージーなギターは、ストーンズの新たな方向性を決定づけました。
ブルースとロックの融合というストーンズの真髄を、テイラーは見事に体現していたのです。
当時としては異例の音質と臨場感
『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、当時のライブ録音としては驚くほどクリアな音質を誇ります。
マジソン・スクエア・ガーデンでの録音を中心に、ツアー中の最も熱狂的なステージを選りすぐって編集された本作には、まさに「その場にいるような臨場感」があります。
チャーリー・ワッツの正確なドラミング、キース・リチャーズの鋭いリフ、そしてミック・ジャガーの観客を煽るようなボーカルが三位一体となり、オーディエンスを熱狂させるライブの真髄が詰まっています。
この時代、ライブ・アルバムはバンドの「熱」を伝える重要な手段でした。
その中で『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』が果たした役割は、単なる記録以上の意味を持ちます。
この作品が「伝説」とされるのは、その時代の空気感とライブ・エネルギーを、これ以上ないほどリアルに伝えているからなのです。
収録曲のハイライトと演奏アレンジの魅力
『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』の魅力を語るうえで欠かせないのが、スタジオ版とは異なるライブならではのアレンジと、熱気あふれる演奏です。
収録されている楽曲は、当時のストーンズの代表曲ばかりでありながら、ライブ演奏を通じて新たな命を吹き込まれています。
その中でも特に印象的な数曲をピックアップし、その魅力を詳しく掘り下げていきましょう。
「Midnight Rambler」のライブ版は必聴
このアルバムのハイライトともいえるのが、9分を超える熱演となった「Midnight Rambler」です。
スタジオ版よりも大幅にテンポが変化し、曲中における静と動のコントラストがより際立つアレンジとなっています。
ミック・ジャガーのハーモニカとキースのスライド・ギターが絡み合うパートでは、聴衆との緊張感あるやり取りが展開され、まるで舞台劇を観ているかのような感覚に陥ります。
スタジオ版との違いに注目すべきポイント
『Jumpin’ Jack Flash』や『Sympathy for the Devil』といった代表曲も、ライブならではの熱量と即興性により、全く新しい印象を受けます。
例えば「Sympathy for the Devil」では、観客のコール&レスポンスや、パーカッションの強調により、原曲以上にトライバルな雰囲気が演出されています。
また「Live With Me」ではミック・テイラーのギターソロが際立ち、ライブならではのジャム的な展開が聴きどころとなっています。
ライブ・アルバムの多くが単なる記録に終始する中で、このアルバムは明らかに異なります。
アレンジ、演奏、空気感、そのすべてが「作品」として成立しているのです。
このような構成が、のちの多くのライブ・アルバムに影響を与えたことは間違いありません。
『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』全収録曲とその解説
本作に収められている楽曲は、ローリング・ストーンズの名曲を中心に構成されており、ライブならではのテンションとアレンジが加わることで、スタジオ版とは一線を画す魅力を放っています。
ここでは、収録順にそれぞれの曲を紹介し、その聴きどころや演奏の特徴を解説します。
演奏は1969年11月のアメリカ・ツアー、主にニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン公演から抜粋されています。
| 1. Jumpin’ Jack Flash |
力強いイントロから始まり、会場全体を一気にロックモードへと引き込むオープニングナンバー。 ライブ版ではテンポがやや速く、ミック・ジャガーの煽りがエネルギッシュ。 |
| 2. Carol(チャック・ベリーのカバー) |
原曲に忠実ながらも、キース・リチャーズのギターがより鋭く鳴り響き、ストーンズらしい荒々しさを加味。 |
| 3. Sympathy for the Devil |
スタジオ版よりリズムが跳ね、観客との掛け合いが強調されたパフォーマンス。 パーカッションが効果的に使われ、トライバルな雰囲気が色濃く表現されています。 |
| 4. Stray Cat Blues |
ミック・テイラーのギターが冴えわたり、よりブルージーに仕上がっています。 |
| 5. Love in Vain |
ロバート・ジョンソンのブルース曲を、ストーンズらしく再構築。 ライブ版ではスライド・ギターの深みが増し、哀愁と情熱が交錯するバラードに。 |
| 6. Midnight Rambler |
9分以上に及ぶ圧巻の演奏で、本作の最大の聴きどころ。 曲中のダイナミクスと即興演奏の緊張感が極めて高い。 |
| 7. Live With Me |
キースとミック・テイラーのギターの掛け合いが魅力。 重厚なグルーヴと攻撃的なアレンジがライブならでは。 |
| 8. Little Queenie(チャック・ベリーのカバー) |
チャック・ベリーのロックンロールをより荒く、パワフルに演奏。 ミックのアドリブMCが随所に挿入され、ライブ感が際立つ1曲。 |
| 9. Honky Tonk Women |
定番ヒットながら、ライブではよりファンキーで分厚いアンサンブルに。 ホーンセクションがない代わりに、ギターとリズム隊が躍動。 |
| 10. Street Fighting Man |
ラストを飾るにふさわしい政治的メッセージを持ったアッパーなナンバー。 原曲よりもアグレッシブな演奏が光る。 |
この10曲すべてが、ストーンズのライブバンドとしてのポテンシャルを遺憾なく発揮した名演です。
スタジオ音源とは一味も二味も違う「生のローリング・ストーンズ」が体感できる、珠玉のセットリストとなっています。
レコーディングと編集の舞台裏
『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、単なるライブ録音ではありません。
音源の選定、ミキシング、オーバーダブといった編集作業を含めて、「作品」として綿密に設計されたライブ・アルバムなのです。
ここでは、どのようなプロセスを経てこの名盤が作られたのか、その舞台裏を紹介します。
マジソン・スクエア・ガーデン公演の選抜
本作の主な収録は1969年11月のアメリカ・ツアー中に行われ、特にニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでの2公演(11月27日・28日)が中心となっています。
このツアーは、ミック・テイラーが正式メンバーとして参加した最初のフルツアーであり、バンドの士気は非常に高かったとされています。
当時のレコーディング機材の制約を乗り越え、ツアー中に複数の会場で録音を実施し、その中からベスト・テイクを選出する形で構成されました。
オーバーダブ疑惑とその真相
ライブ・アルバムにおいてはしばしば問題となるのが、後から加えられるスタジオ補正、いわゆるオーバーダブの存在です。
『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』に関しても、ミック・ジャガーのボーカルやギター、コーラスに一部スタジオでの補正が加えられたことは、後年プロデューサーによって認められています。
しかしその作業は、あくまで「ライブらしさ」を損なわない範囲にとどめられており、むしろ完成度を高めるための「演出」の一環と見ることもできます。
プロデュースはストーンズ自身のプロダクション「Rolling Stones Records」と、グリン・ジョンズが関与。
彼らの手腕によって、ラフさと洗練の絶妙なバランスが保たれた名盤となりました。
この「緻密な計算」があったからこそ、『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は多くのライブ・アルバムと一線を画するクオリティを実現できたのです。
ローリング・ストーンズのライブ盤と比較して見える特徴
ローリング・ストーンズはそのキャリアの中で数多くのライブ・アルバムを発表してきましたが、その中でも『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は特別な位置を占めています。
ここでは、他のライブ盤との比較を通して、本作の個性と傑出性を明らかにしていきます。
ストーンズが「ライブ・バンド」であるという評価のルーツも、この作品にあると言っても過言ではありません。
『Love You Live』や『Still Life』との違い
1977年にリリースされた『Love You Live』は、1975〜76年のツアーを中心に編まれた作品で、当時の派手なステージングや大規模なセットが反映されています。
しかしその一方で、演奏のラフさやアドリブの多さが目立ち、バンドとしての一体感にはやや欠ける印象を受けます。
また、1982年の『Still Life』は80年代らしいポップなサウンドやシンセが導入されており、ファンの間でも賛否が分かれる作品です。
それらと比べて『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、バンドの基本に忠実で、生々しい演奏が最大の魅力となっており、ライブ・ロックの理想形といえるでしょう。
ライブ・アルバムとしての完成度の高さ
他のライブ盤がツアーの記録やファン向けのサービス盤であるのに対して、『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』はひとつのアートとして練り上げられた作品です。
選曲のバランス、曲順の流れ、演奏のテンション、そしてミックスの丁寧さに至るまで、ライブ作品としての完成度が非常に高い。
当時ストーンズと双璧をなしていたザ・フーの『Live at Leeds』と並び称されることも多く、ロック史における「ライブ盤の金字塔」としての評価を不動のものにしています。
このように、他のライブ盤と比べても、『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』はバンドの演奏力、構成力、そして表現力が極限まで研ぎ澄まされた唯一無二の作品です。
ストーンズが「世界最高のライブ・バンド」と呼ばれる所以は、この1枚に凝縮されていると言えるでしょう。
ローリング・ストーンズ『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』の魅力を総括
『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、ただのライブ・アルバムではありません。
ローリング・ストーンズがライブ・バンドとして頂点を極めた瞬間をパッケージングした歴史的ドキュメントなのです。
スタジオ作品では決して味わえない“生のグルーヴ”と“熱狂”が、音の隅々まで記録されています。
ライブ・バンドとしての凄みを象徴する1枚
ミック・ジャガーの煽動的なボーカル、キース・リチャーズとミック・テイラーのツインギター、チャーリー・ワッツの揺るがないビート。
それぞれの個性がぶつかり合いながらも、絶妙なバランスで融合している瞬間が、アルバム全体を通して感じられます。
特に「Midnight Rambler」などにおける緩急のダイナミズムは、ライブ演奏における即興性と構築美の理想形といえるでしょう。
今なお色褪せない歴史的価値
50年以上の時を経ても、『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は古びることなく、ロックの“現場”を体感できる貴重な作品としてリスナーに愛され続けています。
その音は、時代を超えて“今”のリスナーにも新鮮な衝撃を与える力を持っています。
まさに、ライブ・アルバムとは何か?という問いに対する模範解答ともいえる存在です。
『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、ローリング・ストーンズというバンドの凄み、ロックという音楽のライブ性、そして音楽における「熱量」を教えてくれる1枚。
まだ聴いたことがない方は、ぜひこの作品に耳を傾けてみてください。
きっと、あなたの中の“ロック”という言葉の意味が、少し変わるはずです。
- 1970年発表のライブ盤『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』を徹底解説
- ミック・テイラー加入後の初ツアー音源で構成
- 「Midnight Rambler」などライブならではの名演収録
- 一部オーバーダブありも完成度は非常に高い
- 他ライブ盤と比較し、演奏力と臨場感が際立つ
- 全10曲の収録曲と聴きどころを詳細に紹介
- ライブ・アルバムの理想形として今も評価が高い

