『ベガーズ・バンケット』は、ローリングストーンズが1968年に発表したスタジオアルバムで、彼らの音楽的ルーツであるブルースやカントリーへの原点回帰が色濃く表れた作品です。
アルバムには「悪魔を憐れむ歌」や「ストリート・ファイティング・マン」など、政治的・宗教的メッセージを含んだ楽曲も多く、ロック史においても重要な位置を占めています。
「ローリングストーンズ アルバム ベガーズ・バンケット」というキーワードを検索する方は、その音楽的背景や歴史的意義、評価やジャケット論争など、深く理解したいと考えていることでしょう。このブログではその点について述べたいと思います。
この記事を読むとわかること
- 『ベガーズ・バンケット』の制作背景と音楽的特徴
- 各収録曲のテーマとサウンドの魅力
- アルバムがロック史に与えた影響と高い評価

『ベガーズ・バンケット』が名盤とされる最大の理由
ローリングストーンズの『ベガーズ・バンケット』は、1968年に発表された作品で、バンドにとって大きな転機となるアルバムです。
当時のサイケデリック・ムーブメントから一転し、ブルースやカントリーといったルーツ・ミュージックへ回帰した姿勢が高く評価されています。
原点回帰を果たした本作は、彼らの音楽的方向性を再定義した重要な作品として知られています。
ブルースとカントリーへの原点回帰
本作はストーンズが再び黒人音楽やカントリー、ゴスペルといった音楽的ルーツに立ち返った内容で、電気的なサウンドを抑え、アコースティックギターを中心にしたアレンジが特徴です。
「ノー・エクスペクテーションズ」や「ディア・ドクター」などでは、ドラムを排除し、ミニマルな編成によって楽曲の世界観を際立たせています。
このアプローチは当時としては異色でありながらも、リスナーに深い印象を与えました。
ストーンズらしさを取り戻した一作
前作『サタニック・マジェスティーズ』が実験的かつサイケ色の強いアルバムであったのに対し、『ベガーズ・バンケット』はミック・ジャガーとキース・リチャーズの本質的な作曲センスを再確認できる作品でした。
ジミー・ミラーを新たにプロデューサーに迎えたことで、バンドの演奏にも明確な方向性が加わり、音楽としての完成度が飛躍的に向上しました。
“悪魔を憐れむ歌”や“ストリート・ファイティング・マン”といった名曲は、まさにその成果の象徴です。
批評家・ファンの評価と商業的成功
『ベガーズ・バンケット』は、発売直後から音楽批評家たちに絶賛されました。
イギリスではチャート3位、アメリカでは5位を記録し、前作の評価低下を一気に覆す結果となりました。
ローリング・ストーン誌のヤン・ウェナーは「ロックンロールと共に帰ってきた」と絶賛し、長年にわたりこのアルバムはストーンズの代表作とされてきました。
名曲揃いの全収録曲紹介とその解説
『ベガーズ・バンケット』には、ローリングストーンズの音楽的深化と社会的メッセージが詰まった全10曲が収録されています。
ブルース、カントリー、フォークといったルーツ・ミュージックを軸に構成されたこのアルバムは、それぞれの楽曲が独自の物語と感情を持ち、聴く者に強い印象を与える内容となっています。
以下に、全収録曲とその背景・楽曲解説を紹介します。
1. 悪魔を憐れむ歌(Sympathy for the Devil)
アルバムの冒頭を飾る代表曲。悪魔の視点から歴史を振り返るという、極めて挑発的かつ哲学的な歌詞が特徴です。
ブラジリアン・パーカッションとピアノが生み出すグルーヴが独特で、宗教的・政治的な議論を巻き起こした問題作でもあります。
2. ノー・エクスペクテーションズ(No Expectations)
ブライアン・ジョーンズによるスライドギターが印象的なバラード。
失恋と喪失感を静かに歌い上げた、叙情的な一曲で、アコースティックな演奏が心に響きます。
3. ディア・ドクター(Dear Doctor)
カントリー風の楽曲で、ミック・ジャガーが南部訛りで歌うコミカルなナンバー。
失恋をユーモラスに描いており、アルバムの中でもひときわユニークな存在です。
4. パラシュート・ウーマン(Parachute Woman)
ローファイな録音とブルージーな雰囲気が漂う短めの楽曲。
エロティックな表現を含みながらも、アンダーグラウンドな魅力を持つ楽曲です。
5. ジグソー・パズル(Jigsaw Puzzle)
6分超えの中編作品で、ボブ・ディラン風とも言われる風刺的な歌詞が特徴です。
社会の断片をパズルのように組み合わせた構成で、深いメッセージ性があります。
6. ストリート・ファイティング・マン(Street Fighting Man)
当時の社会運動やデモを背景にした政治色の強いロックナンバー。
アコースティックギターを多重録音し、あえてローファイに仕上げたことで、緊迫感と暴力性を音楽で表現しています。
7. 放蕩むすこ(Prodigal Son)
戦前のブルースマン、ロバート・ウィルキンスの楽曲をカヴァーしたフォークブルース。
旧約聖書の「放蕩息子の帰還」を題材にした寓話的内容で、宗教的な重みを持つ楽曲です。
8. ストレイ・キャット・ブルース(Stray Cat Blues)
性的な内容が物議を醸した、ダークでサイケデリックなブルースロック。
不安定で不穏なリズムが、危うい世界観を強調しています。
9. ファクトリー・ガール(Factory Girl)
アイリッシュ音楽やカントリーの要素が融合した牧歌的な楽曲。
労働者階級の女性に対する共感を描き、社会的メッセージと優しさが込められた一曲です。
10. 地の塩(Salt of the Earth)
一般労働者層=“地の塩”に捧げた、アルバムの締めくくりとなる荘厳な曲。
ゴスペル風のコーラスが印象的で、リチャーズとジャガーのデュエットも感動的です。
「悪魔を憐れむ歌」に込められた意味とは?
『ベガーズ・バンケット』の幕開けを飾る「悪魔を憐れむ歌(Sympathy for the Devil)」は、そのタイトルからして物議を醸した問題作です。
この曲は、ミック・ジャガーがボリス・ヴィアンやバルザック、さらにはミハイル・ブルガーコフの小説『巨匠とマルガリータ』に影響を受けて書いたとされています。
悪魔の視点から人類の歴史的事件を語るという構成は、当時としても非常に挑発的でした。
悪魔の視点から描かれる人間の歴史
この楽曲では、悪魔が自らの名を明かしつつ、「イエス・キリストの死」や「ロマノフ王朝の終焉」「第二次世界大戦」などの歴史的事件を列挙していきます。
その語り口から浮かび上がるのは、悪魔とは人間自身の中にある暴力性や欲望の象徴であるという鋭い視点です。
リスナーに自らの内面を見つめさせる意図が込められていると解釈されます。
リズムと構成に込められたメッセージ
音楽的には、ブラジル音楽の影響を受けたパーカッション、ニッキー・ホプキンスのピアノ、コーラスの反復が絡み合い、カオス的な雰囲気を生み出しています。
これはまさに、人間社会の混沌を音で再現しようとした試みであり、単なるロックの枠を超えた芸術的試みと言えるでしょう。
「フー・フー」と叫ぶコーラスも、悪魔に対する野次か歓声か、聴く側の解釈によって変わるのも興味深い点です。
発売当初の反応とその後の評価
発売当初は「悪魔崇拝ではないか」として、保守的な層や宗教団体から批判を浴びました。
また、この曲を演奏中だった1969年のオルタモント公演で観客が殺害されたという事件もあり、その後も長らく物議の対象となってきました。
しかし今日では、ローリングストーンズの代表作であり、ロック史に残る名曲としての評価を確立しています。
アルバム制作の舞台裏とコンセプト
『ベガーズ・バンケット』の制作背景には、ローリングストーンズが音楽的に迷走していた時期から脱却し、自分たちの原点に立ち返るという明確な意志がありました。
このアルバムは、バンドの精神的なリセットと、より土臭いロックへの回帰を象徴する作品となりました。
プロデューサーにジミー・ミラーを迎えたことで、ストーンズのサウンドに新たな生命が吹き込まれたことも重要なポイントです。
1968年という激動の時代背景
アルバムが制作された1968年は、世界的に政治・社会が大きく揺れ動いていた年でした。
ベトナム戦争、学生運動、キング牧師暗殺、パリ五月革命などが相次ぎ、人々の怒りや不安が爆発するような時代だったのです。
その空気感は、「ストリート・ファイティング・マン」のような曲にも色濃く反映されており、アルバム全体が時代の混沌を音楽で語ろうとする意図を持っています。
ジミー・ミラーを迎えての新たなプロデュース体制
それまでのストーンズは、プロデュースに関して明確なビジョンがないままに作品を制作していました。
しかしミック・ジャガーが「バンドの方向性を定めるためには信頼できるプロデューサーが必要だ」と判断し、スペンサー・デイヴィス・グループを手掛けたジミー・ミラーを起用しました。
ミラーは、バンドの荒々しいロック感を引き出しつつも、アレンジや録音にも洗練を加える手腕を持っており、このアルバム以降の名作群にも大きく貢献することになります。
録音場所・手法とアナログ的な質感
レコーディングはロンドンのオリンピック・スタジオを中心に行われ、一部はロサンゼルスでミキシングされました。
この時期のストーンズは、多くの楽曲でアコースティックギターや民族楽器を活用し、原始的で土臭い音作りを徹底しています。
キース・リチャーズによるオープンチューニングの活用や、パーカッションの導入も特徴的で、音の厚みに加えて「生々しさ」を追求した構成になっています。
ジャケット問題とその後の影響
“便所ジャケット”とレーベルとの対立
『ベガーズ・バンケット』の初期ジャケット案は、落書きだらけの公共トイレの壁を撮影した挑発的なデザインでした。
この案は、映像作家バリー・フェスティンとデザイナーのトム・ウィルクスによって制作され、「ジョンはヨーコを愛してる」などの落書きが含まれていました。
しかし、レコード会社のデッカはこのジャケットを“わいせつ”と判断し、使用を拒否。バンドとの対立に発展しました。
ストーンズは「Unfit for Children(子どもには不適切)」のラベルをつけて販売する案などを提示しましたが、これも却下されました。
最終的なジャケットデザインの変更理由
レーベルとの交渉が難航した結果、発売日が大幅に遅れるという事態にまで発展しました。
最終的に妥協案として、白地に筆記体で「Rolling Stones Beggars Banquet」と書かれた“招待状風デザイン”のジャケットに変更され、リリースされました。
この一件により、ストーンズは表現の自由と商業的制約の間で大きな摩擦を経験し、ロックアーティストの表現の在り方に一石を投じる事件として語り継がれています。
最終的に“便所ジャケット”は1984年から再採用され、現在ではオリジナルアートワークとして広く知られています。
先行シングル「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」について
アルバムには未収録の重要曲
「ジャンピン・ジャック・フラッシュ(Jumpin’ Jack Flash)」は、『ベガーズ・バンケット』制作期間中の1968年5月にリリースされた先行シングルです。
アルバム本編には収録されていないにも関わらず、その影響力と人気は絶大で、ローリングストーンズの代表曲のひとつとして今なお演奏され続けています。
原点回帰の象徴的ナンバー
前作『サタニック・マジェスティーズ』でのサイケデリック路線から一転、ブルース・ロックへの回帰を明確に示したのがこの曲です。
キース・リチャーズによるオープンEチューニングを駆使したギター・リフが強烈な印象を残し、ストーンズらしいワイルドなサウンドが復活したことを高らかに告げました。
タイトルの由来とミックの解釈
曲名は、キース・リチャーズの庭を歩く執事の足音からインスピレーションを得て名付けられたとされています。
ミック・ジャガーはこの曲を「自分が通ってきた苦難の経験を跳ね返して、より強くなったことを歌っている」と語っており、再生と復活のメッセージが込められています。
商業的成功とライブ定番曲としての地位
この曲は全英1位、全米3位を記録し、ストーンズの人気と評価を再び押し上げる原動力となりました。
以後のツアーでは必ずセットリストに含まれる定番曲となり、ライブでは観客との一体感を生むアンセム的存在です。
ブライアン・ジョーンズの貢献と葛藤
心身の不調とアルバムへの影響
『ベガーズ・バンケット』の制作時、ブライアン・ジョーンズは精神的・肉体的な問題を抱え、バンド活動に積極的に関われない状態でした。
薬物問題や度重なる逮捕により、レコーディングへの参加も断続的で、その貢献度は著しく低下。
ミック・ジャガーやキース・リチャーズは、彼の脱退や新メンバー加入を検討しはじめるなど、バンド内の緊張も高まっていました。
ジョーンズが残した印象的な演奏
それでもジョーンズは数曲で印象的な演奏を残しています。
「ノー・エクスペクテーションズ」でのスライドギターは悲哀に満ちた名演として評価され、彼の才能を象徴するような瞬間でもあります。
また、ハーモニカやメロトロン、シタールなど多様な楽器を担当し、ストーンズの音の幅を広げる重要な役割を果たしました。
『ベガーズ・バンケット』は、ジョーンズが事実上最後にフル参加したアルバムであり、彼の存在が陰影となって作品に深みを与えています。
名曲揃いの収録曲とその特徴
アコースティック主導の楽曲構成
『ベガーズ・バンケット』の最大の特徴は、アコースティックギターを中心としたサウンド設計にあります。
「ノー・エクスペクテーションズ」や「ファクトリー・ガール」など、エレキを抑えた構成は、ブルースやカントリーといったルーツミュージックに根ざした音像を際立たせています。
キース・リチャーズによるオープンチューニングや、民族楽器の使用が、土着的で深みのあるサウンドを生み出しているのも印象的です。
政治性と詩的センスが融合したリリック
本作は、単なる音楽作品にとどまらず、当時の社会状況や人間の本質を鋭く突いたリリックが多くの楽曲に散りばめられています。
「悪魔を憐れむ歌」では歴史を悪魔の視点から語り、「ストリート・ファイティング・マン」では社会的な怒りを表現。
それらは、ストーンズがロックバンドとして社会に発信する姿勢を明確に打ち出した象徴的な一歩となりました。
『ベガーズ・バンケット』の後に与えた影響
その後の名作アルバム群への布石
このアルバムは、以降の傑作『レット・イット・ブリード』『スティッキー・フィンガーズ』『メイン・ストリートのならず者』へと続く新たな時代の始まりとなりました。
ジミー・ミラーとのコラボにより、音楽的に確かな軸を確立したストーンズは、ここから黄金期へ突入します。
音楽批評家・メンバーからの高い評価
ローリング・ストーン誌や音楽評論家たちは、本作を「ストーンズらしさが最も表れたアルバム」として絶賛。
ミック・ジャガーやキース・リチャーズも、「バンドが本当にやりたい音楽に向き合えた瞬間だった」と振り返っています。
当時の評価に加え、今なおその価値が再評価され続けていることも、このアルバムの偉大さを物語っています。
ローリングストーンズ アルバム ベガーズ・バンケットのまとめ
ロックの歴史に刻まれた傑作の真価
『ベガーズ・バンケット』は、ストーンズの原点回帰と創造性の再出発を象徴する作品です。
商業的成功だけでなく、アーティストとしての矜持や時代への問いかけが込められた内容は、ロック史における金字塔といえるでしょう。
今なお語り継がれる不朽の名盤
半世紀以上を経ても色褪せることなく、新たなリスナーを魅了し続ける『ベガーズ・バンケット』。
それは単なるアルバムではなく、“音楽と社会の関係性”を問う文化的な遺産として、今なお世界中の耳と心を打ち続けています。
この記事のまとめ
- 1968年発表の原点回帰アルバム
- 悪魔を憐れむ歌など名曲多数収録
- アコースティック主導の音作り
- 政治や社会を映す深いリリック
- ジャケット論争と表現の自由
- ブライアン・ジョーンズの最後の貢献
- 後の名作群への出発点
- 今なお語り継がれるロックの金字塔

