ローリング・ストーンズ『サタニック・マジェスティーズ』徹底解説

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ローリング・ストーンズのアルバム『サタニック・マジェスティーズ』は、1967年にリリースされた実験的なスタジオ・アルバムです。

サイケデリック・ロックというジャンルに挑戦したこの作品は、ドラッグ文化や当時のカウンターカルチャーの影響を色濃く反映しています。

本記事では、ローリング・ストーンズの『サタニック・マジェスティーズ』がどのような背景で制作され、音楽的にもビジュアル的にもどんな特徴を持っていたのかを深掘りします。

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『サタニック・マジェスティーズ』とは?アルバムの基本情報とその背景

1967年にリリースされた『サタニック・マジェスティーズ』は、ローリング・ストーンズが初めてセルフ・プロデュースで制作したアルバムです。

サイケデリック・ロックを軸にした本作は、ストーンズにとって最も実験的で異色な作品として知られています。

当時の混乱した社会状況と、バンド内部の緊張が色濃く反映された作品でもあり、その独自性が多くの議論を呼びました。

ローリング・ストーンズ初のセルフプロデュース作品

このアルバムは、ローリング・ストーンズがプロデューサーとして自らの手で仕上げた初のフルアルバムです。

それまではマネージャーのアンドリュー・ルーグ・オールダムがプロデュースを担っていましたが、彼は本作の制作中にバンドとの関係を解消しました。

そのため制作は混迷を極め、音作りの方向性にも試行錯誤が見られます。

リリース日とレーベル情報

『サタニック・マジェスティーズ』は、1967年11月25日にイギリスで、12月8日にアメリカでそれぞれ発売されました。

レーベルはイギリスが「デッカ・レコード」、アメリカが「ロンドン・レコード」です。

リリース当初は全英3位、全米2位と商業的には一定の成功を収めましたが、後に評価が分かれることとなります。

当時の社会的背景と制作状況

1967年という時代背景は、ヒッピー文化とドラッグ文化が広まり、音楽にもサイケデリックな表現が急速に浸透した時期でした。

ミック・ジャガーやキース・リチャーズ、さらにはブライアン・ジョーンズも大麻所持で逮捕されるなど、バンドは法的・精神的にも危機的状況にありました。

こうした混乱の中で制作された本作には、混沌とした雰囲気や幻想的な音作りが随所に表れています。

ビートルズの「サージェント・ペパーズ」の真似と酷評

『サタニック・マジェスティーズ』は、発売当初からビートルズの『サージェント・ペパーズ』の模倣だと多くの評論家に評されました。

両作品が同じ1967年に発表されたこと、共にサイケデリックな表現を取り入れていたことが、比較を避けられなかった大きな要因です。

さらに、ジャケットデザインにおける相互オマージュの存在も、模倣論争を一層過熱させました。

サウンド面での類似と違い

『サージェント・ペパーズ』は構成美と高度なアレンジで称賛されましたが、対する『サタニック・マジェスティーズ』は音の混沌とした実験性が目立ちました。

ミック・ジャガー自身がドラッグの影響を認めている通り、本作では音楽体験よりも感覚体験に重きが置かれています。

この点が、ビートルズとは違うアプローチであるものの、当時のリスナーには理解されづらかったのかもしれません。

ジャケットに表れた“オマージュ合戦”

『サタニック・マジェスティーズ』のジャケットには、ビートルズのメンバーの顔が隠れるように描かれていることで話題を呼びました。

これは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ』における「WELCOME THE ROLLING STONES」というメッセージへの応答だとされています。

視覚的な遊び心が両者にある一方で、ストーンズ側の意図が伝わりきらなかったのか、「ビートルズの後追い」とする印象を強めてしまった側面も否めません。

評論家とファンからの厳しい評価

リリース当時、多くの音楽評論家が『サタニック・マジェスティーズ』を「失敗作」と断じました。

ジョン・レノンもこのアルバムを酷評し、アメリカの批評家ジョン・ランドウは「進化と錯覚を履き違えている」とまで指摘しました。

それに対し、ワイマンは「これは我々の姿をそのまま映した鏡のような作品」とも述べており、当時のストーンズの精神状態が色濃く刻まれていることが伺えます。

全収録曲とその解説

『サタニック・マジェスティーズ』には、幻想的かつ実験的な楽曲が全10曲収録されています。

ビル・ワイマンによる唯一の自作曲をはじめ、メンバー全員の個性と創造力がぶつかり合った独特なサウンドが展開されます。

それぞれの楽曲にはサイケデリックな仕掛けと意味があり、本作の魅力を深く知るには曲ごとの理解が欠かせません。

SIDE A:意識の旅へ誘う前半5曲

  • 「Sing This All Together(魔王讃歌)」 – アルバムの幕開けを飾るナンバーで、民族音楽風のパーカッションとコーラスが織り成す、儀式的な雰囲気が印象的な楽曲です。
  • 「Citadel(魔王のお城)」 – サイケデリックなギターリフと重厚なビートが特徴で、都市と機械文明への皮肉を描いたような歌詞も注目点です。
  • 「In Another Land」 – ベースのビル・ワイマンがリードボーカルを務めた唯一のストーンズ曲。夢の中の出来事のようなぼんやりした浮遊感に満ちています。
  • 「2000 Man」 – 未来人の視点から語られるストーリー性のあるロックナンバーで、後年キッスによるカバーでも知られています。
  • 「Sing This All Together (See What Happens)(魔王讃歌〈二部〉)」 – 8分超の長尺ジャム。後半には隠しトラック「Cosmic Christmas」が仕込まれており、音の実験場とも言える構成です。

SIDE B:幻覚世界を旅する後半5曲

  • 「She’s a Rainbow」 – 鮮やかなストリングスとピアノが印象的な美麗な楽曲。ジョン・ポール・ジョーンズ(後のレッド・ツェッペリン)がアレンジを手掛けています。
  • 「The Lantern」 – 暗闇に光を差し込むようなスピリチュアルなメロディで、死後の世界をテーマにしたとされる神秘的な1曲です。
  • 「Gomper」 – 東洋的な旋律とアシッドなアレンジが絡み合う、強烈なサイケ色を放つ作品。タブラやシタールなどが登場します。
  • 「2000 Light Years from Home(2000光年のかなたに)」 – アルバムを代表する楽曲。宇宙を漂うような音像と、疎外感に満ちた詞がリスナーの感覚を揺さぶります。
  • 「On with the Show」 – サーカス的な演出が光るアルバムラスト。閉じ込められた幻想世界から現実に引き戻すような幕引きが印象的です。

音とイメージの融合がもたらす体験

これら10曲は単なる楽曲ではなく、“トリップ”というコンセプトを音で体験させる仕掛けが随所に組み込まれています。

ストーンズの伝統的なロックとは一線を画す方向性であるため、聴く側にもある種の覚悟と想像力が求められるアルバムです。

しかし一曲ごとに意識を集中させて聴くことで、この作品が放つ時代の空気とアート性の高さを感じ取ることができます。

アルバム制作時のストーンズ内部事情

『サタニック・マジェスティーズ』は、ローリング・ストーンズのキャリアの中でも最も混乱していた時期に制作されたアルバムです。

メンバーの逮捕、マネージャーの離脱、創作方針の迷走など、バンドを取り巻く環境は決して安定していませんでした。

その不安定さが、作品全体の実験性や破綻すれすれのサウンドに色濃く現れています。

メンバーの逮捕と裁判の影響

1967年2月、ミック・ジャガーとキース・リチャーズは大麻所持容疑で逮捕され、大きなスキャンダルとなりました。

さらに5月にはブライアン・ジョーンズも同様の容疑で逮捕され、ストーンズは活動停止の危機に直面します。

裁判によりレコーディングは何度も中断され、作品づくりに集中できないまま時間だけが経過していきました。

バンドの精神的混乱と創作活動

この頃のストーンズは、メンバー間の意思疎通すら難しい状況でした。

ベーシストのビル・ワイマンは著書で、「ストーンズは精神的にも肉体的にも分裂状態にあった」と語っています。

プロデューサーであったアンドリュー・オールダムも制作途中で離脱し、バンドはセルフプロデュースという新たな挑戦を強いられることになりました。

ブライアン・ジョーンズの役割と貢献

当時、ジョーンズは恋人アニタ・パレンバーグをキースに奪われたことや、逮捕・投獄の恐怖から深刻なうつ状態に陥っていたとされます。

しかし、実際には彼は全曲に参加しており、メロトロンやシタール、リコーダーなど様々な楽器を駆使して作品に大きく貢献しました。

彼の演奏が、本作の幻想的な音響世界を形作る重要な鍵となったことは間違いありません。

アートワークとビジュアル面の特徴

『サタニック・マジェスティーズ』は、音楽だけでなくジャケットアートでも強烈な個性を放つアルバムです。

視覚的にもサイケデリックな世界を演出し、当時のカウンターカルチャーと密接に結びついていました。

その装丁には、ローリング・ストーンズ自身の遊び心とメッセージ性が込められており、リスナーに強い印象を残しました。

3D仕様のサイケなジャケットデザイン

オリジナルのLPジャケットは、レンチキュラー加工による3D仕様で、角度によって絵柄が動いて見える仕掛けになっています。

撮影はマイケル・クーパー、使用されたカメラは日本製の高価な3Dポラロイド。

このジャケット制作には、メンバー自身も背景セットの組み立てに関わるなど、ビジュアル面にも強いこだわりが表れています。

ビートルズへのオマージュと応答

ジャケットには、ビートルズのメンバーの顔が密かに組み込まれていることで話題となりました。

これはビートルズの『サージェント・ペパーズ』でシャーリー・テンプル人形が「WELCOME THE ROLLING STONES」と書かれたセーターを着ていたことへの返礼とされています。

こうした“アートでの対話”が行われたことで、2大バンド間のライバル関係がファンの間でも語られるようになりました。

迷路ギミックなどのユニークな演出

ジャケットの見開き左側には、ブライアン・ジョーンズが考案した迷路が印刷されており、出口は背景の砦に通じているという仕掛けです。

このような視覚的にも「旅」や「探索」を象徴するモチーフが、アルバム全体のコンセプトとリンクしています。

また、2010年の日本版SHM-CDでは、この3Dジャケットが完全再現され、ファン垂涎のアイテムとなりました。

批評家・ファンからの評価とその変遷

『サタニック・マジェスティーズ』は、リリース当時から現在に至るまで、賛否が大きく分かれる問題作として語られてきました。

革新性に溢れた内容である一方、ストーンズ本来のブルースロック路線とは異なるため、戸惑いや批判も多く寄せられました

その評価は時代とともに変化しており、現在では一定の再評価も進んでいます。

発売当時の酷評とその理由

1967年のリリース当時、多くの音楽評論家はこのアルバムを「失敗作」や「ビートルズの模倣」と酷評しました。

ジョン・レノンすらこのアルバムを気に入らなかったと言われ、アメリカの著名評論家ジョン・ランドウは「彼らは進歩と錯覚を混同している」と手厳しい批判を展開しました。

このように、本作はサイケデリックに傾倒しすぎた異端作と見なされ、ストーンズらしさを失ったと見なされたのです。

ストーンズ自身による自己評価

バンドのメンバーたちもまた、この作品に対して冷ややかな評価を下しています。

キース・リチャーズは「クソの塊」と語り、ブライアン・ジョーンズは「ブルースの本流から外れている」と不満を抱いていたと言われています。

一方、ミック・ジャガーは「混乱の中でも何かを作れたこと自体が奇跡だった」と振り返りつつ、「音を体験するアルバム」として肯定的にも捉えています。

後年の再評価とリイシュー情報

時代が進むにつれ、実験性の高さやアート志向が評価されるようになりました。

2017年にはリマスターされた「50周年記念エディション」がリリースされ、3Dジャケットやモノ・ステレオ両バージョンの収録など、豪華な仕様で再登場。

これにより、ファンや新たな世代のリスナーからも注目されるようになり、本作は単なる過去の問題作から“一時代の記録”としての価値を得つつあります。

ローリング・ストーンズ サタニック・マジェスティーズの総まとめ

『サタニック・マジェスティーズ』は、ローリング・ストーンズのキャリアの中で異彩を放つ作品です。

サイケデリックという一過性の流行に挑戦し、同時にバンド内部の混乱をも記録した音のドキュメントとも言える存在です。

失敗作とされつつも、唯一無二の魅力を放ち、今なお語られる理由がそこにあります。

革新性と問題作としての意義

このアルバムは、ストーンズが既成のイメージから脱却しようとした瞬間を映し出しています。

ブルースやロックンロールの王道から逸脱し、電子音・民族音楽・実験的構成などを取り込んだ試みは、商業的成功を超えた意義を持ちます。

同時に、バンドが内外からの圧力とどう向き合ったかを知るうえでも、貴重な資料的価値があります。

現代における聴きどころと魅力

現代のリスナーにとっては、本作のサウンドはかえって新鮮に映るかもしれません。

特に「She’s a Rainbow」や「2000 Light Years from Home」は、アートポップやオルタナティブ・ロック好きに刺さる要素を含んでいます。

また、ヴィジュアル面やアナログ的ギミックも楽しめるため、フィジカルメディアでの体験もおすすめです。

“つかの間の幻想”がもたらした価値

ミック・ジャガーは本作を「一つの段階、つかの間の幻想」と表現しました。

それはきっと、サイケデリックという夢の中に一度飛び込んでみたことで、彼らが本来の自分たちを見つめ直すきっかけになったという意味かもしれません。

そう考えると、『サタニック・マジェスティーズ』は、迷走ではなく「必要な遠回り」だったと言えるのではないでしょうか。

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