「Diamonds and Pearls」。そのタイトルを口にするだけで、きらめく宝石の粒と真珠の淡い輝きが、胸の奥にゆっくりと広がっていく。1991年、プリンスは新たな音楽の航海に乗り出した。その船の名は、「プリンス&ザ・ニュー・パワー・ジェネレーション(NPG)」。ファンク、R&B、ポップ、そしてヒップホップ。さまざまな音楽の波が重なり合い、煌めきの結晶となったこのアルバム『Diamonds and Pearls』は、今もなお色褪せず、多くのリスナーの胸を打つ。
この記事では、プリンスとNPGが生み出したこの傑作アルバムについて、その背景、収録曲、未発表音源、ライブ映像、そして2023年に発売された「スーパーデラックスエディション」の魅力まで、余すところなく語り尽くします。プリンスの音楽をもう一度深く味わいたい方、NPGのグルーヴに酔いしれたい方、ぜひ最後までお付き合いください。
この記事を読むとわかること
- 『Diamonds and Pearls』収録曲の魅力と解説
- スーパーデラックスエディションの未発表音源・映像の内容
- プリンスとNPGが目指した音楽の革新性とメッセージ

『Diamonds and Pearls』とは?その背景とNPG結成の意味
『Diamonds and Pearls』は、1991年に発表されたプリンスの13枚目のスタジオ・アルバムです。
この作品はプリンスが新たなバンド「ザ・ニュー・パワー・ジェネレーション(NPG)」を結成し、本格的なコラボレーションを展開した初めてのアルバムとして知られています。
ファンクやポップ、R&B、さらにはヒップホップの要素を融合しながらも、商業的な成功と音楽的多様性を高次元で実現した作品です。
プリンスは1980年代後半、実験的かつ革新的な作品で音楽シーンをリードしてきましたが、『グラフィティ・ブリッジ』での売り上げ不振をきっかけに、新たな方向性を模索していました。
そんな中で誕生したのがNPGであり、その結成はプリンスにとって「新たな時代の幕開け」を意味するものでした。
NPGは、ラッパーのトニー・Mや女性ボーカルのロージー・ゲインズを含む多彩なメンバーで構成され、プリンスの音楽にゴスペル的な厚みやグルーヴの力強さを与えています。
特に、東京で録音された「Money Don’t Matter 2 Night」「Willing And Able」「Strollin’」は、日本のリスナーにとっても特別な意味を持つ楽曲となっています。
当時のプリンスは、アメリカで巻き起こっていたグランジやヒップホップの台頭に刺激を受けつつ、既存の音楽ジャンルを独自のスタイルで昇華しようとしていました。
しかし、リリース当初は賛否両論の声もあり、「プリンスの驚きが薄れた」と感じたリスナーも少なくなかったようです。
それでも、時を経た今では、『Diamonds and Pearls』はNPGとの共鳴が生んだ傑作として再評価されています。
多様なジャンルの融合、個々の楽曲の完成度、そしてプリンスの歌詞に宿るピュアで美しい表現は、今なおリスナーの心を揺さぶり続けています。
『Diamonds and Pearls』収録曲徹底解説|ヒット曲から隠れた名曲まで
『Diamonds and Pearls』には、プリンスの多彩な才能とNPGの魅力が凝縮された珠玉の楽曲たちが収められています。
代表曲「Cream」は、ビルボード全米1位を獲得したセクシーでグルーヴィーなナンバーであり、T・レックスを思わせる艶っぽい歌声とリズムが心地よく響きます。
「Gett Off」では、トニー・Mのラップとプリンスの挑発的なファンクが融合し、プリンス流ヒップホップの世界が展開されています。
「Diamonds and Pearls」は、美しいバラードとして知られ、ロージー・ゲインズの包み込むようなコーラスと共に、純粋で切ない愛を歌い上げた楽曲です。
「Money Don’t Matter 2 Night」は、日本のワーナー・パイオニアスタジオで録音された楽曲で、ジャジーで洗練されたサウンドと社会的メッセージが込められたリリックが特徴です。
さらに、「Thunder」のゴスペル的なコーラスや、「Strollin’」の軽やかでジャジーなアプローチ、「Walk Don’t Walk」の遊び心あふれるコーラスワークなど、アルバム全体に豊かな表情とバリエーションが広がっています。
特筆すべきは、プリンスがあえてベースを強調したり、隙間を活かしたりといった繊細なアレンジ手法です。
その中で「Gett Off」は、When Doves Cryでベースを排除した時とは逆に、重厚なベースラインが楽曲の核となり、力強いグルーヴを生み出しています。
一方で「Cream」や「Strollin’」では、軽やかなリズムと遊び心のあるメロディが印象的で、プリンスの柔軟な音楽性と成熟した表現力を感じさせます。
これらの楽曲群は、ただヒット性を狙っただけの作品ではなく、プリンスが時代の音楽潮流を取り入れつつも、独自の美学を貫いた証だといえるでしょう。
『Diamonds and Pearls』収録曲徹底解説|ヒット曲から隠れた名曲まで
『Diamonds and Pearls』には全13曲が収録されており、プリンスの多面的な才能とNPGの化学反応が随所に感じられる作品となっています。
それぞれの楽曲に込められた魅力や背景を、以下で詳しく解説します。
| 曲名 | 解説 |
| 1. Thunder | ゴスペル的な高揚感とハウスビートの融合。プリンス流のポジティブなメッセージが詰まったオープニング曲。 |
| 2. Daddy Pop | 軽快なファンクナンバー。トニーMのラップが彩りを加え、NPGらしい遊び心が光る。 |
| 3. Diamonds and Pearls | プリンスの美意識が結晶化したバラード。ロージー・ゲインズのコーラスが圧巻。 |
| 4. Cream | 全米No.1ヒット曲。T・レックス風のセクシーな歌声と洒脱な演奏が魅力。 |
| 5. Strollin’ | ジャジーでリラックスした雰囲気のスウィング・ポップ。肩の力が抜けた軽快なナンバー。 |
| 6. Willing and Able | ゴスペル色の強いソウルフルな楽曲。力強いボーカルが心を揺さぶる。 |
| 7. Gett Off | プリンスのエロティックなファンク。ヘヴィなベースラインと官能的な歌声が特徴。 |
| 8. Walk Don’t Walk | 軽やかなポップソング。プリンスとロージーの掛け合いがチャーミング。 |
| 9. Jughead | ヒップホップ要素が強いパーティーチューン。トニーMのラップが主役。 |
| 10. Money Don’t Matter 2 Night | ジャズやAORの要素が溶け合う名曲。「お金より大切なものがある」というメッセージが心に残る。 |
| 11. Push | ゴスペルの熱とファンクのビートが融合した高揚感溢れる楽曲。 |
| 12. Insatiable | 官能的なスロージャム。プリンスのヴォーカルの艶やかさが際立つ。 |
| 13. Live 4 Love | ラストを締めくくるダイナミックなファンク・ロック。ライブ感溢れる熱量が魅力。 |
これらの楽曲は、プリンスの多彩な表現力、NPGとの一体感、そして時代の音楽シーンへの挑戦が詰まったものです。
特に「Diamonds and Pearls」
「Cream」
「Gett Off」
「Money Don’t Matter 2 Night」
は、アルバムの核を成す存在感を放っています。
『スーパーデラックスエディション』の全貌|未発表音源・ライブ映像・豪華ブックレットの魅力
2023年にリリースされた『Diamonds and Pearls: Super Deluxe Edition』は、プリンスの創作の深淵に触れられる夢のようなコレクションです。
7枚のCDと1枚のブルーレイを収録したこの豪華ボックスには、未発表音源47曲、未発表ライブ映像2時間超が含まれ、全75曲+映像3時間の圧倒的なボリュームで構成されています。
また、120ページのハードカバーブックレットも同梱され、貴重な写真や解説が満載です。
注目すべきは未発表音源の充実ぶりです。
ロージー・ゲインズが後に『Closer Than Close』で取り上げた「My Tender Heart」、チャカ・カーンやメイヴィス・ステイプルズへの提供曲のプリンス版デモ、マイルス・デイヴィスに捧げたインスト曲など、貴重な音源が目白押しです。
さらに、グラム・スラムのリメイク版や「Alice Through the Looking Glass」など、これまで秘蔵されていた楽曲が初めて日の目を見ました。
ライブ音源も圧巻です。CD6・7には1992年1月のミネアポリス公演が収められ、NPGとの緊密な演奏や、プリンスのステージパフォーマンスの真髄を感じることができます。
ブルーレイには1991年7月のライブ映像、サウンドチェック映像、そして過去にVHSやレーザーディスクでのみ流通していた『Diamonds and Pearls Video Collection』が収録されています。
これにより、未発表映像も含めた完全版といえる内容が実現しています。
このスーパーデラックスエディションは、プリンスが1990年代初頭に打ち出した「ポップとファンクの融合」の到達点を多角的に楽しめるだけでなく、アーティストとしての軌跡を振り返る貴重な資料にもなっています。
プリンスとNPGが残した音の財産、その全貌を知るなら、このボックスセットは必携のアイテムです。
『スーパーデラックスエディション』全収録曲と解説
『Diamonds and Pearls: Super Deluxe Edition』には、全7枚のCDと1枚のブルーレイが含まれており、未発表音源やライブ映像など、プリンスの創作の舞台裏が詰まった珠玉のコレクションです。
CD1: 『Diamonds and Pearls』リマスター版
オリジナルアルバム全13曲の最新リマスター版。音質の向上により、当時の息吹を新たな感覚で楽しめます。
CD2: シングルエディット&リミックス集
- 「Cream」「Gett Off」などのシングルバージョン
- 「Horny Pony」など12インチミックスやクラブエディットを収録
CD3〜CD5: 未発表音源集(計33曲)
- 「My Tender Heart」 – ロージー・ゲインズが後に再録したバラード
- 「Alice Through the Looking Glass」 – 不思議な夢の世界を描く未発表曲
- 「グラム・スラム」リメイク版 – 生々しいグルーヴと臨場感が魅力
- 提供曲のプリンス版デモ – チャカ・カーン、ジェヴェッタ・スティールらへの曲のデモ版
- マイルス・デイヴィスに捧げたインスト曲 – ジャズの巨匠に捧げるプリンスの敬意
CD6〜CD7: 1992年ミネアポリスライブ音源
未発表ライブ音源を中心に、プリンスとNPGの熱気あふれるパフォーマンスを収録。ファンク、ソウル、ポップが一体となったライブの臨場感が楽しめます。
ブルーレイ: 未発表ライブ映像&ビデオコレクション
- 1991年7月のライブ映像
- 1992年ミネアポリスのライブ映像
- 未公開のサウンドチェック映像
- 『Diamonds and Pearls Video Collection』(VHS・レーザーディスク限定版)の映像
ブックレット
120ページにわたる豪華ブックレットには、貴重な写真、解説、制作背景が満載。ファン必携の資料です。
このスーパー・デラックス・エディションは、プリンスとNPGの創作の軌跡を総括する、究極のコレクションです。
『Diamonds and Pearls』が放つメッセージと今聴くべき理由
『Diamonds and Pearls』は、プリンスが1990年代初頭の音楽シーンに投げかけた挑戦状とも言える作品です。
グランジやヒップホップが台頭し、音楽の価値観が大きく揺れ動く時代において、プリンスは決して過去のスタイルに固執することなく、自身の音楽を時代に適応させる柔軟さを示しました。
それは「ヒップホップの要素を取り入れたラップ曲」や「ゴスペルの熱を宿したバラード」、「ハウスのリズム感を取り入れたグルーヴ」など、多面的な表現に現れています。
しかし、『Diamonds and Pearls』は単なる時流への迎合ではありません。
むしろプリンスは、「愛とは何か」「お金とは何か」「自由とは何か」という普遍的なテーマを、美しいメロディと多彩なサウンドで紡ぎ出しました。
タイトル曲の「Diamonds and Pearls」では、「愛こそが最も大切な贈り物である」というメッセージが響きます。
また「Money Don’t Matter 2 Night」では、資本主義社会への鋭い問いかけと、「お金より大切な価値観がある」という哲学的なメッセージを伝えています。
これらのメッセージは、現代社会においても決して色褪せることがありません。
むしろ、経済格差や社会不安が広がる今だからこそ、『Diamonds and Pearls』が放つメッセージは、より一層私たちの心に刺さります。
さらに、アルバム全体に漂う「洗練されたポップなカオス」の感覚は、音楽の多様性を楽しむ今のリスナーにとっても新鮮で、強烈な魅力を放っています。
聴き返すたびに新しい発見があり、プリンスとNPGの音楽的な冒険心に触れることができる作品です。
だからこそ、今こそ『Diamonds and Pearls』を聴くべき理由があるのです。
それは単なる懐古ではなく、時代を超えて響くメッセージを再確認し、自分自身の人生や価値観を見つめ直すきっかけになるからです。
まとめ|『Diamonds and Pearls』はプリンスとNPGの結晶
『Diamonds and Pearls』は、プリンスが新たな音楽的挑戦に挑んだ意欲作であり、NPGとの共鳴によって生まれた傑作です。
ファンク、ポップ、ヒップホップ、ゴスペルといったジャンルを自在に行き来しながら、一貫して「愛」や「人生」の普遍的なテーマを歌い続けたプリンスの姿勢には、唯一無二のアーティストとしての矜持が宿っています。
そして、『Diamonds and Pearls: Super Deluxe Edition』は、その創作の舞台裏をのぞき見ることができる特別な体験を私たちに与えてくれます。
未発表曲やライブ映像を通じて、プリンスが音楽に注いだ情熱、そしてNPGメンバーとの熱い絆が、鮮やかに浮かび上がります。
プリンスが「ポップの枠を超えて、時代を超えて響く音楽」を生み出すために、どれだけの試行錯誤と探求を繰り返してきたのか──その軌跡を感じられることこそ、このアルバムの最大の魅力です。
改めて聴くと、『Diamonds and Pearls』はただの時代の産物ではなく、今も新鮮な響きを持つ普遍的な音楽であることに気づかされます。
これからも多くのリスナーにとって、人生の節目や心の支えとなる一枚であり続けるでしょう。
ぜひこの機会に、プリンスとNPGが奏でた奇跡のハーモニーに耳を傾けてみてください。
この記事のまとめ
- 『Diamonds and Pearls』は1991年発表のプリンスとNPGの傑作
- ヒップホップやゴスペルなど多様なジャンルが融合
- 「Cream」や「Diamonds and Pearls」などヒット曲多数
- スーパーデラックス版では未発表音源やライブ映像を収録
- 愛や社会問題へのメッセージが込められた歌詞
- プリンスの音楽的探求とNPGの結束が感じられる
- 時代を超えた普遍的な魅力を持つ作品である

