ポール・マッカートニー『ラン・デヴィル・ラン』徹底解説|1999年発表のロックンロール回帰作とリンダへの想い

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1999年に発表されたポール・マッカートニーのアルバム『ラン・デヴィル・ラン』は、ロックンロールとR&Bへの原点回帰を打ち出した意欲作です。愛妻リンダを亡くした翌年に制作された本作は、単なるカバーアルバムではなく、ポール自身の音楽的ルーツと向き合った再出発の一枚でもあります。本記事では、作品背景から収録曲、参加ミュージシャンまでを徹底的に解説します。

この記事を読むとわかること

  • 『ラン・デヴィル・ラン』の制作背景とリンダへの想い!
  • 全収録曲とタイトル曲の聴きどころ!
  • 参加ミュージシャンと限定盤情報の全体像!
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『ラン・デヴィル・ラン』とは?1999年発表の原点回帰アルバム

1999年10月4日にリリースされた『ラン・デヴィル・ラン』は、ポール・マッカートニーがロックンロールの原点へ回帰したカバーアルバムです。

本作はロンドンのアビイ・ロード・スタジオで録音され、わずか数日のセッションで制作されました。

ビートルズ以前、10代のポールが夢中になった50年代ロックンロールやR&Bへの情熱を、成熟した表現力で再提示した意欲作として高く評価されています。

本作は1950年代ロックンロールを中心とした12曲のカバーと、3曲のオリジナル曲で構成されています。

エルヴィス・プレスリーやチャック・ベリーらが歌った名曲群を取り上げながらも、単なる再現に終わらせず、現代的な録音技術で磨き上げている点が特徴です。

私はこのアルバムを聴くたびに、懐古趣味というよりも「今のポールが本気でロックンロールを鳴らしたらどうなるか」という実験精神を強く感じます。

制作はクリス・トーマスとの共同プロデュースで行われ、装飾を極力排したバンド編成が採用されました。

ブラスやストリングスを重ねることなく、ギター、ベース、ドラム、ピアノというシンプルな構成で録音されたことで、ライブさながらの生々しいグルーヴが実現しています。

その結果、本作は単なる企画盤ではなく、ポールのキャリアの中でも特異な輝きを放つ原点回帰の決定版として語り継がれているのです。

リンダへの想いと制作背景

『ラン・デヴィル・ラン』は、前年1998年に亡くなった妻リンダへの想いを胸に制作されたアルバムです。

ポールにとって本作は、深い喪失感を抱えながらも音楽へ立ち返るための重要なプロジェクトでした。

そのため本作は単なるカバーアルバムではなく、リンダへの追悼と再出発の意味を持つ作品として位置づけられています。

リンダの死後、約1年の喪に服していたポールは、自身の音楽的ルーツに立ち戻ることで前を向こうとしました。

若き日に夢中になったロックンロールやR&Bを演奏することは、原点確認であると同時に心の再生でもあったのです。

プロデューサーのクリス・トーマスも本作を「リンダのためのアルバム」と語っており、その言葉からも特別な意味合いが伝わってきます。

特にオリジナル曲「Try Not to Cry」は、伴侶を失った男性の心情を描いた楽曲です。

直接的な表現を避けながらも、喪失と悲しみを内包した歌詞が胸を打ちます。

しかしアルバム全体のトーンは決して暗くありません。

むしろ疾走感あふれるロックンロールで構成されており、前向きなエネルギーに満ちている点こそが本作の本質だと私は感じます。

悲しみを乗り越える方法として、ポールは過去に閉じこもるのではなく、音楽そのものを思い切り鳴らす道を選びました。

その姿勢は、ビートルズ時代から変わらぬ彼のポジティブさを象徴しています。

『ラン・デヴィル・ラン』は、人生の痛みをロックンロールの力で昇華した一枚なのです。

収録曲全曲紹介|アルバム完全ガイド

『ラン・デヴィル・ラン』は全15曲で構成され、50年代ロックンロールとR&Bの名曲群、そしてポールのオリジナル曲が並ぶ痛快な一枚です。

ここでは全収録曲を曲順どおりに整理し、それぞれの意味と聴きどころを簡潔に紹介します。

全15曲|トラック別ガイド

  • ブルー・ジーン・ボップ:ジーン・ヴィンセントの代表曲。オープニングにふさわしい疾走感で、アルバムの方向性を一気に提示する。
  • シー・セッド・イェー:歯切れのよいビートが印象的なロックンロール。ポールのシャウトが若々しいエネルギーを放つ。
  • オール・シュック・アップ:エルヴィスの名曲をストレートにカバー。タイトな演奏と力強いボーカルが光る。
  • ラン・デヴィル・ラン:本作のタイトル曲にしてオリジナル。チャック・ベリー風のリフが炸裂するアルバムの核。
  • ノー・アザー・ベイビー:スキッフル由来の名曲。切なさを帯びたボーカルが深い余韻を残す。
  • ロンサム・タウン:リッキー・ネルソンのバラードをしっとり再解釈。円熟味あふれる歌唱が際立つ。
  • トライ・ノット・トゥ・クライ:ポールのオリジナル曲。喪失をテーマにした内省的なナンバーで、アルバム中もっとも感情が滲む。
  • ムーヴィー・マグ:カール・パーキンスのロカビリー。軽快なテンポで再び勢いを取り戻す。
  • ブラウン・アイド・ハンサム・マン:チャック・ベリーの名曲。リズムの跳ね方が心地よく、ライブ感が際立つ。
  • ワット・イット・イズ:ポールのオリジナル。軽快でポップな構成が、カバー群の中で新鮮な存在感を放つ。
  • コケット:スタンダード曲を洒脱にアレンジ。ピアノが印象的で、アルバムに彩りを加える。
  • アイ・ガット・スタング:エルヴィス・ナンバーをスピーディーに展開。短く鋭いロックンロールの快感。
  • ハニー・ハッシュ:ブルージーなグルーヴが魅力。骨太なバンド演奏が堪能できる。
  • シェイク・ア・ハンド:ゴスペル色を帯びたR&B。力強い歌唱がアルバム後半を盛り上げる。
  • パーティ:陽気なロックンロールで締めくくり。ラストにふさわしい開放感あふれるエンディング。

限定7”シングル・ボックス/iTunes Store版ボーナス・トラック

『ラン・デヴィル・ラン』には、通常盤15曲に加えて、限定盤や配信版のみで聴くことができるボーナス・トラックが存在します。

特に限定7インチ・シングル・ボックスおよびiTunes Store販売版に収録された楽曲は、コレクターの間でも重要な位置づけにあります。

ここでは、その追加曲について解説します。

ボーナス・トラック

  • ファビュラス(Fabulous):オリジナルはチャーリー・グレイシーによる1950年代ロックンロール。ポールはこの曲を軽快かつストレートにカバーし、アルバム本編と同様にライブ感あふれる演奏で仕上げている。

「Fabulous」は、1999年に発売された限定7インチ・シングル・コレクターズ・ボックスに収録されました。

さらに後年、iTunes Storeで配信されたデジタル版にもボーナス・トラックとして追加され、より広く聴けるようになりました。

明るく跳ねるビートと親しみやすいメロディは、本編ラストの「パーティ」と並ぶほどの高揚感を持っています。

この楽曲の存在により、『ラン・デヴィル・ラン』はより純度の高いロックンロール・アルバムとして完成度を高めていると言えるでしょう。

アルバムの世界観をさらに楽しみたい方は、ぜひこのボーナス・トラックもチェックしてみてください。

収録曲一覧と構成の特徴

『ラン・デヴィル・ラン』は全15曲で構成され、そのうち12曲がカバー、3曲がポールのオリジナル曲です。

収録時間は約40分とコンパクトで、50年代ロックンロールの勢いをそのまま凝縮した内容になっています。

ここでは収録曲の特徴とアルバム全体の構成について詳しく見ていきます。

まず本作の軸となっているのは、エルヴィス・プレスリーやチャック・ベリー、ジーン・ヴィンセントらの楽曲です。

代表的なカバーとして「All Shook Up」「Brown Eyed Handsome Man」「Blue Jean Bop」などが並びます。

単なる懐メロ再演ではなく、現代的な録音で蘇らせた骨太なロックンロールに仕上がっている点が大きな魅力です。

カバーアルバムとしての選曲センス

本作はヒット曲だけでなく、比較的マニアックな楽曲も取り上げているのが特徴です。

例えば「No Other Baby」は1958年のスキッフル曲で、若き日のポールに強い印象を残した楽曲でした。

こうした選曲からは、ポール自身の音楽体験を反映したパーソナルなカバー集であることが伝わってきます。

また、全体を通して過剰なアレンジは施されていません。

バンドの一発録りに近い形で録音され、ライブ感を重視したサウンド設計になっています。

その結果、アルバムには自然な躍動感と温度が宿っているのです。

オリジナル曲とタイトル曲の存在感

本作には「Run Devil Run」「Try Not to Cry」「What It Is」の3曲のオリジナルが収録されています。

中でもタイトル曲「Run Devil Run」は、チャック・ベリー風の疾走感あふれるナンバーで、アルバムの象徴的存在です。

シンプルながらも印象的なリフとサビの高揚感が、全体の流れを引き締めています。

「What It Is」はリンダの死の数か月前から書き始められていた楽曲で、軽快なビートが印象的です。

そして「Try Not to Cry」は、伴侶を失った男性の視点で描かれるバラードです。

この3曲が挿入されることで、単なるカバー集ではなく、現在進行形のポールを示す作品へと昇華されています。

参加ミュージシャンと豪華メンバー

『ラン・デヴィル・ラン』の魅力を語る上で欠かせないのが、実力派ぞろいの参加ミュージシャンです。

本作はシンプルなロックンロール編成でありながら、英国ロック史に名を刻む名手たちが集結しました。

その顔ぶれを見るだけでも、本気度の高さが伝わってきます。

ギターにはピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアが参加しています。

彼は全曲でエレクトリック・ギターを担当し、楽曲によってはラップスティールも披露しています。

ブルージーで伸びやかなトーンは、50年代ロックンロールに新たな深みを与え、単なるオールディーズ再現にとどまらないサウンドを生み出しました。

ドラムにはディープ・パープルのイアン・ペイスが参加しています。

さらにデイヴ・マタックスも曲によってドラムを担当し、楽曲ごとにニュアンスの異なるビートを支えています。

重厚でありながらタイトなドラミングは、アルバム全体の推進力を担う重要な要素です。

そのほかにもギタリストのミック・グリーン、キーボードのピート・ウィングフィールドやジェレイント・ワトキンスらが名を連ねています。

ポール自身は全曲でベースとボーカルを担当し、曲によってはギターやパーカッションも演奏しました。

この布陣により、世代の近い名プレイヤー同士が真正面からぶつかり合うセッション感が生まれています。

興味深いのは、若手中心ではなくキャリア豊富なミュージシャンを起用した点です。

それにより、若さ任せの荒々しさではなく、円熟味と余裕を感じさせるロックンロールが完成しました。

私はこのバンドの一体感こそが、本作を単なる企画盤ではない名盤へ押し上げた最大の要因だと感じています。

シングル・カット詳細|No Other Baby 各種フォーマット

『ラン・デヴィル・ラン』からは「No Other Baby」がシングル・カットされ、複数フォーマットでリリースされました。

7インチ・アナログ、CDステレオ盤、CDモノラル盤といった仕様違いが存在し、コレクターズ・アイテムとしても人気があります。

ここでは各フォーマットの収録内容を整理します。

7″ single(R 6527)

  • No Other Baby(Dickie Bishop / Bob Watson)– 4:17:スキッフル由来の名曲を円熟の歌声で再解釈したリード・トラック。
  • Brown Eyed Handsome Man(Chuck Berry)– 2:27:軽快なリズムが心地よいチャック・ベリーの代表曲カバー。
  • Fabulous – 2:15:チャーリー・グレイシーのロックンロールを痛快にカバーしたボーナス的楽曲。

CD Stereo single(CD R 6527)

  • No Other Baby(Bishop / Watson)– 4:17:ステレオ・ミックスで収録。奥行きのあるサウンドが特徴。
  • Brown Eyed Handsome Man(Berry)– 2:27:躍動感あふれるバンド演奏をクリアに楽しめる。
  • Fabulous(Bernie Lowe / Kal Mann)– 2:15:明るく跳ねるビートが際立つステレオ音像。

CD Mono single(CDRS 6527)

  • No Other Baby(Bishop / Watson)– 4:17:モノラル・ミックスでより凝縮感のあるサウンド。
  • Brown Eyed Handsome Man(Berry)– 2:27:ロックンロール本来の一体感を感じさせる音像。
  • Fabulous(Lowe / Mann)– 2:15:ヴィンテージ感を強調したモノ・バージョン。

とくに「Fabulous」はアルバム通常盤には未収録で、シングル盤や限定盤でのみ聴ける楽曲でした。

ステレオ盤とモノラル盤の両方が用意された点も、50年代ロックンロールへのオマージュとして象徴的です。

これらのシングル展開は、アルバムの世界観を補完すると同時に、コレクション性を高める重要なリリースとなりました。

アルバムレビュー|なぜ今も評価されるのか

『ラン・デヴィル・ラン』は1999年の発表当時から高い評価を受けましたが、現在でも再評価が進む作品です。

それは単なるロックンロール・カバー集ではなく、ポール・マッカートニーの人生とキャリアが凝縮された一枚だからです。

ここでは本作が今なお支持される理由を、改めて掘り下げていきます。

まず特筆すべきは、56歳とは思えないエネルギッシュなボーカルです。

「All Shook Up」や「Honey Hush」では若き日の衝動を感じさせるシャウトを披露し、ロックンロールの原初的な興奮を体現しています。

それでいて無理に若作りする印象はなく、円熟した余裕と説得力が同居している点が実にポールらしいところです。

また、本作はリンダの死という大きな喪失を経た後の作品でありながら、過度に内省的ではありません。

むしろロックンロールの持つ解放感を前面に出し、音楽そのものの力で前を向こうとする姿勢が感じられます。

だからこそ本作は「追悼作」であると同時に、「再生のアルバム」でもあるのです。

さらに、3曲のオリジナル曲が絶妙なバランスで配置されている点も見逃せません。

特にタイトル曲「Run Devil Run」は、50年代スタイルを踏襲しながらもポール独自のメロディセンスが光る楽曲です。

カバー曲と自然に溶け込みながらも存在感を放ち、アルバム全体を引き締める役割を果たしています。

チャート成績としても英国でトップ20入りを果たし、批評家からも好意的なレビューを受けました。

しかし数字以上に重要なのは、ポールが自らの原点と真正面から向き合った姿勢でしょう。

『ラン・デヴィル・ラン』は、ビートルズ後も挑戦を続けてきた彼が、あえてシンプルなロックンロールに立ち返った勇気の記録です。

だからこそ本作は今も色褪せず、ポール・マッカートニーのキャリアを語る上で欠かせない一枚として輝き続けているのです。

まとめ|『ラン・デヴィル・ラン』が示したポールの原点と未来

『ラン・デヴィル・ラン』は、1999年という時代に放たれた異色のロックンロール作品です。

しかしその本質は懐古ではなく、ポール・マッカートニー自身の原点確認と再生の物語にあります。

最後に、本作が持つ意味を改めて整理してみましょう。

本作は50年代ロックンロールとR&Bへの愛情をストレートに表現したカバーアルバムです。

アビイ・ロードでの短期集中レコーディング、デヴィッド・ギルモアやイアン・ペイスらとのセッションは、音楽そのものを楽しむ姿勢に満ちています。

過剰な演出を排したサウンドは、ポールの音楽的核心をむき出しにしました。

同時に本作は、リンダを失った悲しみを乗り越える過程で生まれた作品でもあります。

「Try Not to Cry」に込められた感情、そして疾走するタイトル曲「Run Devil Run」に象徴される前向きなエネルギーは、悲しみをロックンロールの力で昇華する姿を映し出しています。

それは聴き手にとっても、人生の困難を乗り越えるヒントを与えてくれるものです。

ビートルズ、ウイングス、そして長いソロ活動の中で、ポールは常に新しい挑戦を続けてきました。

その中で本作は、あえてシンプルなスタイルに立ち返った点で特別な意味を持ちます。

『ラン・デヴィル・ラン』は、原点回帰でありながら未来への一歩でもあったのです。

ロックンロールの衝動、円熟した演奏、そして人生の物語。

それらが凝縮されたこのアルバムは、今なお新鮮な輝きを放ち続けています。

もしまだ聴いたことがないなら、ぜひ音量を上げて再生してみてください。

きっと、ポール・マッカートニーというアーティストの核心に触れる体験になるはずです。

この記事のまとめ

  • 1999年発表の原点回帰アルバム!
  • リンダへの想いが込められた一枚!
  • ロックンロール&R&B中心の構成!
  • 全15曲+限定ボーナス曲を網羅!
  • タイトル曲は疾走感あふれる代表曲!
  • デヴィッド・ギルモアら豪華参加!
  • アビイ・ロード録音のライブ感!
  • 悲しみを昇華した再生のロック作品!
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