『メンローヴ・アヴェニュー』は過小評価か?未完成だからこそ伝わる魅力

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『メンローヴ・アヴェニュー』は、1986年に発表されたジョン・レノンの編集盤であり、
未発表音源を中心に構成された、いわば“番外編”的なアルバムである。
その立ち位置ゆえに、長らく過小評価されてきた作品でもあるが、
時間をかけて聴き直すことで、その印象は大きく変わってくる。

本作には、『マインド・ゲームス』『心の壁、愛の橋』『ロックンロール』といった
70年代中期のアルバム制作過程で録音された音源が収められており、
完成形に至る前の揺らぎや迷いが、そのまま音として残されている。
アンソロジー以前に世に出た未発表音源集として、
今あらためて再評価すべき意味を持つ一枚だと言えるだろう。

この記事を読むとわかること

  • 『メンローヴ・アヴェニュー』がどんな位置づけの編集盤なのか
  • 未発表音源・リハーサル音源から見えるジョン・レノンの創作過程
  • 過小評価されてきた理由と、今あらためて再評価されるべき視点
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『メンローヴ・アヴェニュー』とはどんなアルバムか

『メンローヴ・アヴェニュー』は、
1986年にリリースされたジョン・レノンの未発表音源を中心とした編集盤である。

オリジナル・アルバムでは拾いきれなかった楽曲や別テイクを集めた本作は、
公式ディスコグラフィの中でも、やや特殊な立ち位置に置かれてきた。

しかし、その性格を正しく理解することで、
本作が果たしている役割は決して小さくないことが見えてくる。

本作に収録されている音源は、
『マインド・ゲームス』『心の壁、愛の橋』『ロックンロール』といった
1970年代中期のアルバム制作過程で録音されたものが中心である。

いずれも最終的な完成形に採用されなかった楽曲や別バージョンであり、
ジョン・レノン自身が当時「作品」として世に出さなかった理由を内包している。

そのため、アルバム全体には整然とした構成美よりも、
試行錯誤の痕跡や、判断の揺らぎが色濃く残されている。

また『メンローヴ・アヴェニュー』は、
アンソロジー以前に公式リリースされた未発表音源集
という点でも重要である。

後年の『ジョン・レノン・アンソロジー』のように、
体系的な編集や解説が施される前の段階で、
リハーサル音源に近い状態の録音がそのまま提示された点は、
当時としては異例だった。

結果として本作は、
完成度よりも制作現場の空気感や心理状態を記録したアルバムとして、
独自の価値を持つ存在となっている。

収録曲全曲紹介|ディスク別ガイド

本ボックスセットは12ディスク構成で、ライヴ、スタジオ、ジャム、宅録、進化過程までを完全網羅しています。

ここでは全収録曲をディスクごとに整理し、それぞれの意味と聴きどころを簡潔に紹介します。

ディスク1|『メンローヴ・アヴェニュー』未発表セッション集

  • ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン:夢見心地の浮遊感が漂う、未完成だからこそ印象に残るオープニング。
  • ロック・アンド・ロール・ピープル:溌剌としたエネルギーが際立つ、ロックンロールへの純粋な衝動。
  • エンジェル・ベイビー:甘さと脆さが同居する、私的な空気感を残したカヴァー。
  • マイ・ベイビー・レフト・ミー:原曲の持つブルース感を引き延ばした、試行錯誤の跡が聴こえる一曲。
  • トゥ・ノウ・ハー・イズ・トゥ・ラヴ・ハー:情感過多とも言えるヴォーカルが印象的な、フィル・スペクター縁の楽曲。
  • 鋼のように,ガラスの如く:後の完成形とは異なる、骨組みの段階が露わになった演奏。
  • 心のしとねは何処:アレンジを削ぎ落としたことで、内省的な歌詞がより直接的に響く。
  • 枯れた道:乾いた感触が強調され、孤独感が際立つラフ・テイク。
  • 愛の不毛:感情を抑制しきれない歌唱が、生々しい心理状態を伝える。
  • 果てしなき愛(ブレッス・ユー):装飾を排したことで、ラヴ・ソングとしての私的な温度が強まった一曲。

1986年というリリース時期の意味

『メンローヴ・アヴェニュー』がリリースされた1986年という時代は、
ジョン・レノンの未発表音源が
体系的に整理・公開される以前の過渡期にあたる。

現在のように、アーカイヴ音源やボックスセットが
一般的に受け入れられている時代とは異なり、
当時は「未発表音源=補足的資料」という認識が強かった。

そのため、『メンローヴ・アヴェニュー』は、
大きな話題性や派手なプロモーションを伴うことなく、
静かに市場に送り出された編集盤だったと言える。

同時期にリリースされた『ライヴ・イン・ニューヨーク・シティ』と比べても、
本作はあくまで控えめな存在として扱われていた。

しかしこの1986年というタイミングだからこそ、
後年のアンソロジー的編集とは異なり、
選曲や構成に過度な整理や説明が加えられていない
という特徴が生まれている。

結果として、『メンローヴ・アヴェニュー』は、
「資料」として整えられる前の、
生々しい未発表音源が残された貴重な記録となった。

アンソロジー以前に発表されたからこそ、
本作はジョン・レノンの創作の現場を、
ほぼ無防備な形で覗き見ることのできる
例外的なアルバムなのである。

未発表音源とリハーサル音源が持つ価値

『メンローヴ・アヴェニュー』の最大の特徴は、
完成版ではなく未発表音源やリハーサル音源が中心に収録されている点にある。

ここで聴ける演奏は、
最終的なアレンジやミックスが施される前段階のものであり、
いわばジョン・レノンの創作現場をそのまま切り取った記録だ。

演奏の粗さや構成の揺らぎは確かに存在するが、
それは欠点というよりも、
完成へ向かう途中でしか生まれないリアリティ
として機能している。

声のニュアンスや感情の起伏は、
完成版以上に直接的で、
ときに聴き手を戸惑わせるほど率直だ。

特に『マインド・ゲームス』『心の壁、愛の橋』『ロックンロール』
各セッション由来の音源では、
ジョン・レノンが曲に対して
どう向き合い、どこで迷っていたのかが、
音そのものから伝わってくる。

こうした音源は、
後年の『ジョン・レノン・アンソロジー』で
体系的に提示されることになるが、

その原型を、最も無防備な形で体験できるのが
『メンローヴ・アヴェニュー』
だと言える。

完成度では測れない価値を持つこれらの音源は、
ジョン・レノンの音楽を
「作品」ではなく「過程」として理解するための、
重要な手がかりとなっている。

完成度よりもリアリティが残された記録

『メンローヴ・アヴェニュー』に収録された音源は、
完成度や商品価値を優先して整えられたものではなく、

制作途中のリアルな状態がそのまま残された記録
である。

テンポの揺れやアレンジの未整理さ、
ヴォーカルの荒さなどは、
通常であればカットされる要素かもしれない。

しかし、これらの要素があるからこそ、
ジョン・レノンが楽曲と向き合っていた

精神的な距離感や迷い
が、
生々しく伝わってくる。

完成版では聴き取れない、
歌詞の置き方やフレージングの試行錯誤は、
表現が確定する直前の「揺らぎ」を示している。

特に『心の壁、愛の橋』セッション由来の音源では、
後年リリースされた完成版よりも、
感情が直接的に露出しており、
アレンジが感情を覆い隠してしまう前の姿
聴くことができる。

こうした未完成さは、
決して欠陥ではなく、

ジョン・レノンという表現者の実像に近づくための入口
として機能している。

『メンローヴ・アヴェニュー』は、
完成された名盤を補足する資料であると同時に、
音楽が生まれる瞬間の緊張感を封じ込めた、
貴重なドキュメントなのだ。

なぜ『メンローヴ・アヴェニュー』は過小評価されてきたのか

『メンローヴ・アヴェニュー』が長らく過小評価されてきた最大の理由は、

オリジナル・アルバムではなく編集盤としてリリースされた
という点にある。

完成された作品群と並べて語られることが少なく、
あくまで補足的、あるいはコレクター向けの一枚として
位置づけられてきたのが実情だ。

また、本作が収録元としている
『マインド・ゲームス』『心の壁、愛の橋』『ロックンロール』の三作は、
ジョン・レノンのキャリアの中でも
評価が分かれやすい時期の作品である。

そのため、それらのセッションから派生した未発表音源集である
『メンローヴ・アヴェニュー』も、

二次的な位置づけで語られやすかった
と言える。

さらに、1986年というリリース時期も影響している。
大規模なアーカイヴ企画や、
「未発表音源を価値として聴く」という文化が
まだ十分に成熟していなかった時代において、
本作は理解されにくい存在だった。

結果として、『メンローヴ・アヴェニュー』は、

評価の俎上に乗る前に静かに流されてしまったアルバム
となり、
その魅力が語られる機会も限られてきたのである。

しかし、後年のアンソロジー作品やアーカイヴ盤を経た現在だからこそ、
本作の持つ意味と価値を、
改めて見直す土壌が整ってきたと言えるだろう。

アンソロジー以前だからこそ見える姿

『メンローヴ・アヴェニュー』が持つ最大の特徴のひとつは、

アンソロジー以前に公式リリースされた未発表音源集
である点にある。

後年の『ジョン・レノン・アンソロジー』では、
音源は時代順に整理され、文脈や解説も付加された形で提示された。
それに対して『メンローヴ・アヴェニュー』は、
体系化される前の状態で、
音源がほぼ生のまま提示されている。

この「整理されていない」感覚は、
一見すると不親切にも思えるが、

ジョン・レノンの創作の現場を覗き見る感覚
を、
より強く与えてくれる。

選曲には明確なストーリー性よりも、
感触や空気感が優先されており、
リスナーは楽曲単位ではなく、
制作期の心理状態を断片的に体験することになる。

アンソロジー以降の視点で聴き返すと、
『メンローヴ・アヴェニュー』は、
完成されたアーカイヴの「前段階」として、
非常に貴重な存在であることがわかる。

だからこそ本作は、

整理された理解ではなく、感覚的な理解を促すアルバム
として、
今なお独自の意味を持ち続けているのである。

未完成だからこそ伝わる魅力と再評価の視点

『メンローヴ・アヴェニュー』は、
完成度や代表作という尺度で測ると、
どうしても評価が低くなりがちなアルバムである。
しかしその見方こそが、
本作の本質を見えにくくしてきた要因だと言える。

本作に収められた未発表音源やリハーサル音源は、
いずれも「完成させること」を目的としたものではなく、

創作の途中段階における思考や感情の記録
として存在している。

整えられていない演奏や、
判断が保留されたままのアレンジは、
ジョン・レノンの迷いや不安定さをそのまま映し出す。
それは決して弱点ではなく、

人間としてのリアリティを伴った表現
として、
聴き手に強く訴えかけてくる。

後年のアンソロジー作品によって、
未発表音源を体系的に聴く環境が整った今だからこそ、
『メンローヴ・アヴェニュー』の持つ
「整理されていない価値」が、より鮮明に浮かび上がる。

完成された名盤では捉えきれない、
創作の途中にあったジョン・レノンの姿。

未完成であるがゆえにこそ残されたその瞬間
に耳を傾けることが、
本作を再評価するための最も重要な視点なのだろう。

『メンローヴ・アヴェニュー』は、
過小評価されてきたアルバムであると同時に、
時間を経てようやく意味を持ち始めた作品でもある。
今あらためて通して聴くことで、
その静かな魅力に気づくはずだ。

まとめ/再評価|『メンローヴ・アヴェニュー』が今あらためて聴かれる理由

『メンローヴ・アヴェニュー』は、
ジョン・レノンの公式アルバム群と比べると、
どうしても周縁的な存在として語られてきた編集盤である。
未発表音源中心という性格から、
長らく過小評価されがちな一枚でもあった。

しかし本作を丁寧に聴き直すと、
そこには完成度や完成形とは別の価値が、
確かに刻まれていることに気づかされる。
『マインド・ゲームス』『心の壁、愛の橋』『ロックンロール』各期の
リハーサル音源や別テイクは、
ジョン・レノンが迷いながらも音楽と向き合っていた
創作の途中経過そのものを伝えている。

後年の『ジョン・レノン・アンソロジー』では、
未発表音源は体系的に整理され、理解しやすい形で提示された。
それに対して『メンローヴ・アヴェニュー』は、
整理される前の状態で音源が並べられており、

制作現場の空気や心理の揺らぎを、より直感的に感じ取れる
作品となっている。

完成形だけを追いかけていては見えない、
試行錯誤や未決定の瞬間。
その不安定さこそが、
ジョン・レノンという表現者の人間的な魅力を、
最も近い距離で伝えてくれる。

『メンローヴ・アヴェニュー』は、
アンソロジー以前に存在した、
未発表音源の「居場所」としてのアルバムであり、
今だからこそ再評価されるべき一枚である。
名盤の陰に埋もれがちな本作に耳を傾けることで、
ジョン・レノンの音楽が持つリアリティと奥行きを、
あらためて実感できるはずだ。

この記事のまとめ

  • 『メンローヴ・アヴェニュー』は1986年発表の未発表音源中心の編集盤
  • 『マインド・ゲームス』『心の壁、愛の橋』『ロックンロール』期の音源を収録
  • 完成形ではなく制作途中のリハーサル音源が多く残されている
  • アンソロジー以前だからこそ整理されていない生々しさがある
  • 完成度よりも創作過程のリアリティに価値がある作品
  • 編集盤ゆえ長く過小評価されてきた背景がある
  • 今あらためて聴くことでジョン・レノンの人間的魅力が浮かび上がる
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